その方法は、確かにある。ありがたいことに、私はそれを発見したおかげでファーストクラスへの無料アップグレードを勝ち取った。まず、自分が力を握っているという幻想を捨てることである。それは邪魔になるだけだ。

 ありもしない力を行使しようとせず、実際に権力を持っている人の寛大さに訴えかけるのだ。人は強要されていると感じると、拒否したくなる。しかし頼られたり尊敬されたりすれば、その同じ行為を喜んでやろうとするものだ。

「No!」という係員の声を聞いた私は、割って入った――文字どおり、フランス人カップルと係員の間に歩いて割って入り、その会話を中断させた。そして、私の秘密兵器――フランス語を使うことにしたのだ。

 係員に「ちょっと時間をください」とことわって、カップルに係員の言い分をフランス語で伝えた。それから、職員に向き直り、彼女の話をカップルがどう受け取っていたかを説明した。

 ひとたび皆が落ち着くと、フランス人カップルは謝罪し、フライト遅延による係員の苦労に対する理解とねぎらいの言葉をかけた。またカップルは、係員に座席指定の義務がないことはわかっていたけれど、自分たちはとにかく不安だったこと、そして彼女が離陸の準備に忙殺されていたけれど、もしかしたら今回に限っては、不安を訴えれば座席指定をくれるかもしれないと思った、と述べた。このような短い会話の後、係員はカップルに座席が割り当てられた新たな搭乗券を発行した。

 権力を持つ者の寛大さに訴えかけることが、確実に有効となる場合があるのだ。

 興味深いことに、ビジネスの世界では、自分の周囲の人々が自分より力を持っている、と感じることがよくある。顧客はいつでも自分以外の取引先に移れるし、部下は転職できる。同僚は彼ら自身の目標達成だけを追求しているのかもしれない。

 力関係上どの位置にいようが、相手の寛大さに働きかけることは有効だ。たとえば、こちらが支払う側であっても、ボランティアの人たちに囲まれているのだ、と思うようにする。つまり、命令よりも依頼をして、ヒエラルキーと駆け引きではなく、信頼と尊敬に基づく関係を構築するということだ。

 誰かが権力争いをしているのに気づいたら、割って入ることを考えよう。どちらかに荷担するためではなく、溝を埋めるためだ。争いにひとときの中断がもたらされれば、相手を人として見つめ、自身の奥底にある寛容な心を見直すよい機会となる。多くの場合、当人たちは論争に深く捕らわれるあまり、自分の足下しか見えていない。第三者による中断は、当事者たちに立場を超えた大局観を取り戻す助けにもなる。

 係員が私の仲裁に感謝を述べたとき、私自身もちょっと試してみようと思いついた。お役に立ててよかったと伝え、続けてこう言ってみたのだ。

「あなたが、ほかにもたくさんの乗客を助けようとしていたことも、私は見ていましたよ。・・・・・・それでもし可能ならの話になるのですが、いやたぶんルールに反しているとは思いますが、もし私の座席をアップグレードできる権限をあなたがお持ちで、もしファーストクラスの席が空いていれば、とても嬉しいのですが・・・。そうしていただけたら、この旅が素晴らしいものになるだろうなぁ。もしできたら、でいいですけど」

 結局、その便は機材の問題が発生したために欠航となり、ほかの便に乗ることになった。ファーストクラスの客室がもっと大きい飛行機だ。乗り換えのとき、彼女は新たな搭乗券を発行してくれた。座席番号は、ファーストクラスになっていた。


原文:The Best Way to Handle a Power Struggle August 9, 2010