これはサミーという信心深い男に起こったことである。ある日、サミーは家ごと洪水に飲み込まれた。そして家の屋根に登り、神に助けを求めて祈りを捧げた。

 サミーは木片が流れてくるのを見たが、そのまま何もしなかった。「神様が助けてくれるから」と信じて。その後、人が乗ったボートが近づいてきてサミーを助けようとしたが、サミーは断った。「神様が助けてくれるから」と言って。水位はどんどん上昇し、ついに彼の首まできた時、頭上にヘリコプターが飛んできた。サミーは手を振り返し、「神様が助けてくれるから大丈夫」と言った。そしてとうとう溺死してしまった。

 気がつくと、サミーは天国にいて神に迎えられていた。「どうして私を助けてくれなかったのですか」と訊くと、神はこう答えた。「助けようとしたよ! 木片、ボート、そしてヘリコプターまで送ったのに・・・・・・」

 これはつくり話だが、教訓は得られる。サミーは「神による救助」という戦略に固執するあまり、助からなかったのだ。

 私は12年前に会社を始めるとき、50ページに及ぶ事業計画を用意した。事業に専念し、失敗を回避し、成長戦略を進めるうえで、この計画は良きツールとなった。しかし今日の私の会社を見れば、当初の計画とはまるで違うものになっている。

 それは経済状況が変化し、私自身も、クライアントも変わり、そしてビジネスチャンスも変化したからだ。もし当初の計画にとらわれていたら、失敗していただろう。環境の変化に目を光らせ、計画の放棄を辞さず、新たな現実と呼応する新たな計画を立てることで、成長が可能となったのだ。

 ある母親が、自閉症の子どもを育てる苦労を語ったときのことが思い出される。「私は、事前の計画にもとづいた“なりたい母親”にはなれませんでした。必要にせまられ、“なるべき母親”になりました」

 偉大なマネジャーにも、同じことがいえる。彼らはあらかじめ決めていたマネジメント方針があっても、社員の強みや弱みに合わせて常に方針を調整しているのだ。

 観察と調整。これこそが効果的なリーダーシップのカギである――社内でも、アウトドアでも。

 登山道の話に戻ろう。私は一団の進行を止めて、道に迷ったことを正直に伝えた。そして簡単に道に迷ってしまった原因は、登山道にばかり気をとられていたからだ、と説明した。

「まったく・・・・・・それで、“迷わなくなくなる”ためにはどうすればいいんですか?」16歳の男の子は皮肉っぽく言った。

「わかってるだろう?」

「地図を見ろってことですか」

「あと、周りもね!」と私は答えた。


HBR.ORG原文:Don't Get Distracted by Your Plan April 21, 2010