2013年3月号

日本のものづくり2030年への展望

戦後70年の歴史から考える

藤本 隆宏 :東京大学大学院 経済学研究科 教授

藤本 隆宏

東京大学大学院 経済学研究科 教授

エレクトロニクス企業の巨額赤字計上などの悪いニュースが出るたびに、「日本のものづくりは衰退した」と騒がれるが、このような意見は、現場・企業・産業・経済の根本的な違いを無視し、「ものづくりは現場で起こる」という基本認識を欠いている。かくも多数派のものづくり論が混乱するのは、長期的な「現場視点の歴史観」の欠如によるものではないだろうか。そこで本稿では、戦後の国内ものづくり現場の略史を、約20年刻みの時代区分で試みる。すなわち、戦後の復興・冷戦成立期を経た、1950~60年代の「移民なき高度成長期」、70~80年代の「冷戦下の国際競争期」、そして90~2000年代の「冷戦後の世界競争期」である。特に直近20年の国内現場に注目すると、円高が進行するなか、低賃金の隣国との過酷な競争を強いられた「暗黒時代」だったといえる。これらのハンディを能力構築で克服して生き残り、なお生産性向上の大きな伸びしろを持つ国内の優良現場は、今後20年は、過去20年より存続可能性が高まるだろう。内外賃金差が急速に縮小しているからである。日本の優良現場は、言わば「夜明け前の闇のなか」にいると見るのが、現場の歴史観から想定される、現場の近未来である。

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