このような状況に反旗を翻したメーカーがあります。ブラックフライデー(感謝祭の翌金曜、クリスマスセールのかきいれ時)に「自社のジャケットを買わないで」と『ニューヨーク・タイムズ紙』に広告を打ったパタゴニアです(広告「Don't Buy This Jacket」)。

 パタゴニアというのは、衣料品を中心にアウトドア系のグッズを製造・販売している会社です。もちろん、製品を買ってもらわなければ事業がなりたちませんし、たくさん買ってもらえればもらえるほど会社は成長します。そのパタゴニアが、あえて、「買ってくれるな」と広告を打ったのはなぜでしょうか。

 広い視野を持ち、長期的に考えた場合、本当に必要なものを少しだけ買って長く使ってもらったほうがいいと考えているからです。

 パタゴニアは直営店を中心に展開しており、大型スーパーなどでは取り扱いがないのが普通なので、一般的な知名度はあまり高くありません。友人からは「パタゴニアって、南米かどっかの国じゃなかったったけ?」などと聞かれてしまうこともあります。でも、アウトドア系の世界では有名なブランドです。

 製品のデザインは、よく言えば定番で、悪く言えばぱっと目を引くものではありません。品質は折り紙つき。その分、高価格品が多いアウトドアウエアのなかでも高めの価格設定となっています。ブランドの雰囲気が味わえるだけで他社製品と実質的な違いがない安い製品がないのも特徴でしょう。

 これは、いずれもパタゴニアの基本方針が形になったものです。はやり廃りの激しいはっきりしたデザインの製品にすれば買い換えで次々に売れるかもしれません。でも、そうして需要を喚起すれば、古い服はゴミになります。安い製品も同じです。気軽に買ってもらえるし、コストダウンした製品は傷むのも早く、すぐに買い換えなければならなくなるでしょう。儲けの最大化をビジネスの目的と考えるなら、ある意味、いい話ばかりだと言えます。でも、壊れた製品はゴミになります。相当量の資源を使って作ったものなのに、それがどんどんゴミになってしまうのです。

 もったいない話です。地球の資源が限られていることを考えると、本当にもったいないことです。

 だから、多少高くなってもしっかりしたもの、長く使えるものを作ったほうがいい――そう、パタゴニアは考えたのです。そして、消費者にも同じように考えてほしい、本当に必要なものだけを買い、それを長く使ってほしいと願い、「Don't Buy This Jacket」と広告で訴えたわけです。