「データに基づく意思決定」は
もはや競争優位の常識である

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 このように、まだ分析されていない「眠っているデータ」を有効に利用することで大きなビジネス上の価値を創出することができる。マッキンゼーのグローバル・インスティテュートが昨年発行したビッグデータに関するレポート[4]によれば、ビッグデータをうまく利用することによって、例えば米国のヘルスケア産業では3000億ドル(約24兆円)の価値を生み出すことができるとしている。あるいは、消費者のロケーションデータを使うことによって、新たに世界で6000億ドルの市場価値を生み出すことができると指摘している。

 こうした「ビッグデータ」の動きは、IBMやオラクル、SAP、NTTデータなどが次々とデータ分析系のソフトウェアベンダーを買収していることからもわかる。彼らは、これら統計的分析とそれに基づくモデリングや予測が、大きなビジネスになりつつあることを知っているのだ。

ビッグデータ・ブームに踊らされない

 現在、IT業界はビッグデータのブームに乗って、ここぞとばかりに「ビッグデータ・ソリューション」を喧伝している。だが、ビッグデータというハイプに単純に踊らされてはならない。ビッグデータや、それを分析するサーバー・ソフトウェアさえ揃えておけば、新たなビジネス上の知見が得られ、自動的にイノベーションが起きるのだろうか。答えはノーである。

 経営にデータを用いること自体は、昔から行われているはずだ。今起きているビッグデータの潮流は何が違うのか。何が新たなオポチュニティをもたらすのか。そのために経営者が知らなければならないことは何か。落とし穴はどこにあるのか。

 この連載では以降全8回にわたって、ビッグデータについて経営の立場で知っておくべきこと、いわば「経営者にとってのデータ・リテラシー」について、様々な角度から検証していこう。


 

 

 

[参考文献]
[1] Ian Ayres, Super Crunchers: Why Thinking-by-Numbers Is the New Way to Be Smart, ISBN-13: 978-0553805406.邦訳『その数学が戦略を決める』文春文庫, ISBN-13: 978-4167651701, 2010.
[2] Time Swampland, “Inside the Secret World of the Data Crunchers Who Helped Obama Win,”
http://swampland.time.com/2012/11/07/inside-the-secret-world-of-quants-and-data-crunchers-who-helped-obama-win/, 2012.
[3] Thomas H. Davenport and D.J. Patil, “Data Scientist: The Sexiest Job of the 21st Century,” Harvard Business Review, Oct., 2012. 邦訳「データ・サイエンティストほど素敵な仕事はない」,『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2013年2月号.
[4] McKinsey Global Institute, “Big data: The next frontier for innovation, competition, and productivity,”
http://www.mckinsey.com/insights/mgi/research/technology_and_innovation/big_data_the_next_frontier_for_innovation, 2011.

 

 

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