2. 資本市場を理解する

 CEOの座に昇り詰めた者はほぼ例外なく、企業のある分野において大きな成功を収めた者である。大規模な部門を効率よく管理した経験があったり、策定したマーケティング戦略が成功を収めたり、といったことだ。しかし実際は、大半のCEOが株式市場の仕組みをよく理解していない。彼らをトップの座に押し上げたスキルや努力は、大抵の場合、市場や投資家に対処するための準備としては十分ではないのだ。

 見識のあるCEOは、株式市場で株価が形成される仕組みを学ぶ。この分野における研究では、以下3つの重要ポイントが指摘されている。

第一に、企業の価値とは、将来のキャッシュフローの現在価値である。非常に長い目で見ると、収益とキャッシュフローは同じになるが、短期的には両者は大きく異なる場合がある。大半の企業が収益や1株当たりの利益を重視する中で、見聞の広いCEOは、長期的なキャッシュフローに焦点を当てるものだ。

第二に、株式市場では、キャッシュフローが何年も先の将来を反映する。つまり、株式市場は長期志向である。もう一度確認しよう。短期志向の投資家がなんと言おうと、株式市場における価値は、長期的なキャッシュフローによって決定される。本来投資家は、長期的な成果に対して短期の賭けをする。この点を確認したければ、スプレッドシートを作成し、自分の目で確かめてみるとよい。価値を創造するキャッシュフローが企業の株価の十分な根拠となるまでに、10年以上の月日を要することは珍しくない。

第三に、株式市場は価値創造に対して対価を支払う。M&Aを例にとってみよう。大半の取引は、収益にプラスに働くが、価値を損なう。しかし研究によると、企業合併の相乗効果が買収企業の支払うプレミアムを上回る場合、買収企業の株価は、収益に対する直接の影響にかかわらず上昇する。また、その逆もありうるのだ。

 CEOは、市場を理解しようとする場合に、アナリスト、投資銀行家、あるいはメディアに注目することが多い。これらはどれも良い情報源とは言えない。なぜなら、いずれも株価を形成する情報全体のうち、わずかな部分しか反映しないからである。市場を理解するための時間を割かないCEOは、自社の目標と相容れない動機を持つ者の影響を受けてしまう危険性がある。