質問:P&Gにはイノベーション志向の文化が強く根付いているように思われるが、そうした基盤がない場合は、どうすればよいのか。

回答:外部の人の多くは、P&Gを主にマーケティングに強い企業だと見なしている。しかし同社は毎年20億ドルを研究開発に投資しており、イノベーションへのコミットメントが非常に強い。数十年にわたり新製品や新ブランドを生み出し続けている。

 どんな活動でも、新人が一夜にしてベテランになることは不可能だ。残念なことに、多くの企業はイノベーションへの取り組みでこの過ちを犯している。つまり、当初から背伸びしすぎなのだ。イノベーションに不慣れな企業が、大きな予算をつけて、大規模なチームを組み、実現性の低い壮大な目標を掲げているのを見ると、私はいつも心配してしまう。

 あれだけイノベーション志向が強い組織風土でありながら、P&Gはニュー・グロース・ファクトリーの構築を、相当慎重に進めているということを考えてほしい。論文で述べたが、ほんの一握りのプロジェクト・チームを集め、2日間の簡単なワークショップを行うのが、その最初のステップである。

 イノベーションへの歩みを始めたばかりの企業であれば、次の3つのアプローチが挙げられる。(1)すでに新たな成長事業に携わっている人を集め、計画的に議論に加わってもらうことにより、同時並行で進めることができる。(2)最初に1人か2人に、その業界の周辺に存在すると思われる脅威と機会をざっと挙げてもらう。(3)基本的な用語の定義から始める。多くの企業では「イノベーション」といった簡単な用語について、社員の間で共有される定義がない。共通の定義をつくり、そして自社に大きな影響を与えるイノベーションの種類を明確にすることによって、今後行うべき取り組みが明らかになる。

質問:P&Gは製品の販売を中心とした企業である。サービスを主な商品としているわが社の場合はどうなるのか。

回答:どちらかといえばサービス企業のほうが、P&Gが行ったことを同社よりもっと早く行うことができるだろう。つまり、新しいサービスを提供する場合、研究開発や製品テストなどを念入りに何年もかけて行う必要がないことが多い。そのうえ、この20年間の情報技術の進歩により、ほとんどのサービス事業において重要な因子をテストすることが非常に容易になってきている。

 P&Gとサービス企業が異なるのは、ビジネスモデルのイノベーションについてどの程度考える必要があるか、という点である。P&Gの場合は、現行のビジネスモデルの中核をなす要素を新たな製品カテゴリーに適用することによって、新たな成長を生むことが可能だ。

 たとえば、P&Gがヒューゴボスやドルチェ&ガッバーナのような高級ブランド向けに香水を製造し、数十億ドル規模の高級香水事業を行っていることを知る人は少ないだろう。P&Gは顧客主導による商品開発や規模の経済の活用といった、同社がすでに身につけているノウハウを用いて業界をリフレーミングしているのである。

 一方サービス企業であれば、新しい収益モデル、生産方式、流通チャネル、販売後のサポートといったビジネスモデルの要素それぞれについて、広範に取り組む必要があるだろう。


原文:Answering Your Questions About P&G and Innovation May 23, 2011