1.原点に立ち戻れ

 ターゲット顧客のニーズ、ウォンツ、欲求を心底理解するために、P&Gの研究者たちは市場で数千時間に及ぶ実地調査を行った。チームメンバーたちは、この時間が変革をもたらしたと述べている。それはインド市場をターゲットとした同社のそれまでの取り組みとは対照的なものであった。2、3年前は、低価格帯のジレット商品を使ってマサチューセッツ工科大学のインド人学生を対象に、商品開発テストをしていたのだ。学生たちはその商品を気に入ったという結論が出た。もちろん、蛇口を捻れば熱いお湯がたっぷりと出る居心地の良い洗面所で髭を剃るのと、ほとんどお湯も出なければ水もないようなインドの農村地帯で、もう片方の手に鏡を持ちながら髭を剃るのとでは大違いである。

2.商品を薄める(dilute)のではなく、顧客の歓び(delight)を

 P&Gは、消費者に歓びの体験を提供するためにイノベーションを起こそうと努めた。これは、新興国市場の消費者をターゲットとする最も良い方法は機能を落としていくことである、という考え方と真っ向から反する方法であった。同社は、水が不足しがちであることを考慮して簡単にすすげる機能をつけたり、カミソリを握るインド人の癖を踏まえて独自のグリップ形状を開発したりした。もちろん、安く商品を提供するには、機能とのトレードオフが必要とされる。しかし、常に消費者を視点の中心に据えることにより、際立った商品が生まれた。

3.ビジネスモデルを市場に合致させよ

 ジレットに示される、市場に出かけてブランド化するケイパビリティは、尊敬に値する。だがインドで成功するためには、新たな生産方法、配送の仕組み、宣伝方法などが必要とされる。ビジネスモデルを市場に合わせることにより、P&Gが成功する確率は高まるだろう。

 火曜日のセミナーでは、これらのテーマが繰り返し議論された。講演者たちは、新しい市場を獲得するためには、この例のように、初めから終わりまで徹底したイノベーションが求められることが多い、という点で意見の一致を見た。ジレットの実践したこの成功マニュアルを参考にして、世界中にある未開拓の市場に向けて、魅力的な商品をさらに多くの企業が提供していくことを望みたい。


原文:Three Innovation Lessons from the Gillette Guard November 17, 2010