これは、一朝一夕で解決できることではありません。ものごとには順序がありますから、いきなり人材の獲得や育成をしようとしても、それは難しい。前段として、グローバルな人材を育てるための経営基盤が必要です。

 なかでも重要なのが、7つの重点分野のうちの「会計」です。経営に関する数値を迅速に得て、それを人材の評価や報酬制度につなげることができる基盤が必要です。どんなに優秀な人を採用しても、成果と報酬が透明で連動していなければ育ちませんし、定着もしません。

会計基盤の整備でグローバルの共通言語を作る

――グローバル化を目指す日本企業が、最初に取り組むべき分野が「会計のグローバル化」ということでしょうか?

 そのとおりです。ぜひここから始めていただきたい。まずは、世界中にある財布の中にいくらあるのかを管理することです。日本企業でグローバルに対応した会計システムを採用しているところはまだほとんどありません。会計でグローバル化が進めば、ほかの分野も進めやすくなります。会計で扱う数字は、全世界の共通言語となるので、経営に関するコミュニケーションもとりやすくなるからです。

 具体的には、管理会計基盤のグローバル化です。しかし、単に表面的な整備だけでは意味がありません。IFRS(国際会計基準)の適用も先送りされて、連結決算といっても多くの日本企業で進められているのは表面的な連結でしかありません。勘定科目の統一や、経理業務の標準化などがなされないままで連結決算を行っても、真のKPI管理はできません。

 世界中どこからでも、グループ内の数字を迅速に集計して分析できる仕組みがないと、世界に散らばる関連会社を評価・分析して経営を行うことはできないのです。ましてや、人材育成など、ほかの重点分野のグローバル化を進めるのは難しいでしょう。

――与那嶺さんは、日本IBMに入社されて1年半になります。IBMでは、こうした重点分野におけるグローバル化は、どのように実現されていますか?

 実は入社する前、外から日本IBMを見ていた時よりも、実際働いてみると、想像以上にグローバル基盤がしっかりできていることに非常に驚きました。

 IBMは170ヵ国で事業を展開していますが、会計を例に取ると、財務会計、管理会計のシステムは全世界で統一しています。もちろん勘定科目なども標準化されており、世界中の決算が翌月4日目にはすべて確定し、経営判断に活用できるようになっています。そこから米国基準、日本基準、国際会計基準などに基づいた報告がまとめられます。4日目の締め日からだいたい2週間程度であらゆる分析が行われて、アナリストなど外部へ開示できるようになります。

 170ヵ国でビジネスを展開しながら高収益を続けるというのは、並大抵の経営基盤では実現できません。実はIBMは2008年のリーマンショック後、売上高は15%下がったものの、収益率は上がりました。なぜなら、先を予測するための根拠となる情報があったために、すばやく対策を実行に移すことができたからです。

 私が入社した1年半前、IBMの株価は118ドルでしたが、今日(10/19)現在では178ドルと上がっています。これはもちろん、新興国でのビジネスが順調に推移しているということもありますが、経営基盤の標準化と統合がなされており、常に「カイゼン」を行っていることも大きな理由の1つです。IBMではさらに会計基盤の改訂を行っており、現在4日で出ている数値をもっと早期に集計し、経営のスピードアップを図る計画です。