経営は商売丸ごとをかたまりとしてつくっていくという仕事です。この本質にはどこの国であろうと大きな違いはありません。グローバル化には未知の未整備の土地で白紙から商売を興していくという仕事がついて回ります。ゼロから商売丸ごとを経営できるかどうかが問われます。

 ローソンの中国事業の責任者は松浦学さんという方です。松浦さんはコンビニ業界のたたき上げ、これまでにさまざまな修羅場を踏んだ経験をもち、「商売丸ごと」を動かすという意味での経営ができる人です。松浦さんは一時期四国かどこか、日本国内の地域支社のトップをやっていました。現在は中国事業の総経理で上海に赴任しています。

 もちろん国が違えば言葉や商慣習などさまざまな苦労があるはずですが、彼と話をしてみると「まったく違った世界に踏み出す」という感覚でもなさそうです。それもそのはずで、事業を総体として経営するという意味では、オペレーションのスケールが違うだけで、四国でも中国でもどっちにしろ「商売丸ごとをしに行くことには変わりない」のです。松浦さんのような商売人としての経営人材がいなければ、グローバル化は実現できません。

商売のセンスは
「育てる」ものではなく「育つ」もの

 グローバルであろうとなかろうと、経営人材には商売人としてのセンスが求められます。商売丸ごとを動かしていくためには、個別の職務領域での担当者の仕事に求められるスキルを超えた、「センス」としか言いようのないものが不可欠です。スキルをいくら磨いても経営者にはなれません。優れた「担当者」になるだけです(それはそれで企業にとって大切な人材ですが)。

 英語ができるとか法務に詳しいとかITを使いこなせるとかファイナンスがわかるといった意味でのスキルであればさまざまな方法で育成することができます。しかし商売センスということになると直接的には育てられません。センスは「育てる」ものではなく「育つ」ものです。一人ひとりが自分でセンスを磨くしかない。商売丸ごとを動かせる経営人材がどこでも不足しているというのは、当たり前の話です。経営人材が必要なのはどこの会社でもわかり切っている。そんなに簡単に育てられるものであれば、もっとたくさんの経営人材がとっくに輩出されているでしょう。

 未開の地で商売を興せるような経営人材は直接的には育てられない。商売センスは経験によってしか育ちません。しかも「担当者」としての業務経験はまるで役に立ちません。ニワトリと卵の論理そのものでありまして、商売丸ごとを経営するという生身の経験を重ねるしかありません。