働き盛りのエース人材を
10年スパンで海外に送り込む

 国境や価値観、階層といった壁を越えるためには、いくつかのポイントに注意する必要がある。とりわけ、重要なのが人材である。

 ユニ・チャームは、エース人材を10年スパンで現地に送り込むようにしている。このことは、ユニ・チャームの掲げる「共振の経営」と密接に関係している。

 共振の経営は社員一人ひとりが自分で考え、行動することを主軸に据えている。環境変化が激しく、世界各地でビジネスを展開している現在、こうした考え方はますます重要になっていると思う。

 共振の経営に欠かせない実践知を体得した人材は「共振人材」であり、グローバル人材と言うこともできる。こうしたリーダーの役割は非常に大きい。

 現地のローカル社員は、本社から赴任する社員を厳しい目で見ている。「この人と一緒に働きたい」「この人と一緒に仕事をすれば成長できる」と思ってもらえなければ、ローカル社員はついてこない。当社は現地の社員からリーダーとして認められるようなエース人材を、10年間の赴任を想定して選定している。腰を据えて現地ビジネスに取り組んでもらうには、10年程度の期間は必要だろう。

 海外に赴任するエース人材は、社歴20年超の働き盛りである。20年というと、社会人としてのキャリアが、日本の「失われた20年」にほぼ重なる。国内マーケットは長く停滞を続けているが、海外、とりわけアジア市場は急成長中だ。そんな成長市場で働くことの喜びを、彼らは実感している。自分の努力がダイレクトに業績に跳ね返ってくる。そのワクワク感は、国内ではなかなか味わえないものだ。

 現在では、本社役員の半数を海外赴任中または海外赴任の経験者が占めている。エース人材を海外に投入しているのだから、ある意味では当然のことだろう。

 このような人事を行っていると、「国内の人材が枯渇するのではないか」と言われることがある。しかし、エース人材を外に出せば、結果としてセカンドエース、サードエースが育ってくる。社員にチャンスを与えることが、「人材の兵站」を整えることにもつながるのである。

 いま、世界中の様々な国や地域でビジネスチャンスが膨らんでいる。例えば、女性用生理用品の場合、1人当たりGDPが1000ドルを超えると一気に普及が進むと言われる。子供用の紙オムツは3000ドルが目安とされている。もちろん国や地域によって市場の様相は異なるが、2020年までに多くの地域で、当社の扱う商品の市場が顕在化することは間違いない。

 私たちは、同時多発するチャンスをすべて摘み取りたいと考えている。そのカギを握るのは、やはり人材である。共振の経営を現地で実践できる共振人材を、どれだけ量産できるか。ユニ・チャームの成長はここにかかっている。