グローバルで人材を調達するクラウドHRが実現するとすれば、そこで求められるものは、長期雇用と結びついた会社への強い忠誠心でもなく、年功に伴う知的熟練でもない。ビジネスの芽となるような新しいアイデアを、いかに創出することができるかが、カギを握っている。

 そのような人材をうまく処遇していこうとすれば、企業がとるべき人事制度は、「ひらめき給」とでも呼べるようなあり方だ。ロチェスター大学のエドワード・デシ教授がいうように、内発的モチベーションが創造性と結びつくとすれば、創造的活動に対して、事前に報酬を約束するように条件づけた処遇体系は、かえって創造性を阻害してしまう。新しいものを生み出すことに喜びを感じている人に、あえてお金の話をすると、しらけてしまうのだ。

 反対に、社員に好きな活動に自発的に取り組ませてみる余裕が必要だ。グーグルには、就業時間の20%を担当業務以外の分野に使うことを義務づける「20%ルール」がある。3Mにも「15%ルール」がある。そして、その創造的活動が陽の目を見た暁に、はじめて、賞賛とねぎらいの意味を込めて、報酬を与えるのがよい。それが「ひらめき給」制度だ。昔のボーナスの仕組みとか、有期の年俸制のようなものを考えてもらえばよいだろう。

成長のジレンマ

 残念ながら、企業も人も、成熟すると独創性を失う傾向がある。ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授は、優良企業が、顧客の意見に真摯に耳を傾け、既存製品・技術の改良を行い、さらに高品質の製品サービスを提供することで、かえってイノベーションに立ち後れ、失敗を招くという現象を、『イノベーションのジレンマ』(翔泳社2001年)と呼んだ。個人も同様に、教育の過程で多くの模範解答や正解の出し方を学び、かえって創造性を失っていく。それが成長のジレンマだ。

 ハーバード・ビジネス・スクールのクリス・アージリス名誉教授とMITの故ドナルド・ショーン教授は、組織学習論において、いったん獲得した考え方や行動の枠組みにしたがって問題解決を行う(シングル・ループ学習)だけでは、環境に適応しながら生き残っていくことは、そうとうむずかしいと指摘している。だから、過去の成功体験や固定観念を自ら捨て去るアンラーニング(学習消去)が必要なのである。