不安と将来が同じ脳の働きに依っているというのは象徴的である。われわれは不安がなければ計画ができない。不安というのは、決してマイナスのものではなく、われわれの将来に不可欠なものなのである。現代が「うつの時代」であるとすれば、その不安こそが将来に備える力になる。

楽観主義の効用

 不安に根差した悲観主義は、現実的な予測をし、周到な計画をもたらす。それは、注意深く危険を回避し、失敗を防ぐという意味で、われわれのサバイバルには効果的である。

 その一方で、不安とは正反対の楽観は、成功と関係している。われわれは、好ましい出来事が起きる確率を過大評価し、好ましくない出来事が起きる確率を過小評価する傾向にある。これは、「楽観主義バイアス」と呼ばれている。

 たとえば、旅先で事故にあう確率を過小評価し、がんや脳卒中や心筋梗塞になる可能性を低く見積もる。タバコを吸っている人なら気づいているだろうが、「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の1つとなります」と、パッケージにはっきり書いてある。「確かに喫煙は死につながる」と頭では納得しているのに、大抵の場合、「自分ではない他のヤツが死ぬんだ」と思うものだ。

 逆に、試験に合格する可能性や、仕事で成功する可能性や、恋愛が成就する可能性を過大評価する。われわれは自分にとって都合のよい将来に対して、楽観的な憶測を抱くものだが、このことにはあまり気づいていないし、その効用も強調しないのが美徳だと思われている。

 楽観主義は、われわれのものの見方を変える。主観の世界のなかで認知を変えることに役立っている。それだけではない。楽観主義は現実を変える力さえもっている。それは期待が自己成就するからだ。

 もともと根拠のない予言や思い込みであっても、予言を信じて行動することによって、結果的に予言どおりの現実がつくられる。それをロバート・マートンは、「予言の自己成就」と呼んだ。