リーダーシップが1人に任されないのは、現代のチームの特徴のようだ。たとえば、サッカー日本代表監督アルベルト・ザッケローニ氏は言う。「リーダーが複数いるチームのほうが望ましいのは確かだ。ただし、周りからリーダーにふさわしいと認められて、自然にそうなっていく。リーダーは結局、自薦ではなく、他薦であるべきだ」。

 同様に、元ラグビー日本代表監督の平尾誠二氏は、優れたチームには3人のリーダーがいると言う。1人は、メンバーの心をつかみ、チームを1つにまとめ上げる「チームリーダー」であり、いわゆるキャプテンの役回りだ。もう1人は、ゲームをうまく運び、試合の流れを呼び込み、チームに勝利を呼び込む、チームのエースに期待されるような「ゲームリーダー」である。

 とはいえ、ここまでは常識的だ。チームスポーツを真剣にやられていた人であれば、キャプテンとエース、すなわちチームリーダーとゲームリーダーの2人の存在は、なるほどと実感できるものだろう。

 平尾氏は、さらに第3のリーダーに着目する。それは、チームの状態やゲームの展開がはかばかしくないときに、面白いことを言ったり、画期的な考えを出したりする「イメージリーダー」というものだ。チームの雰囲気を変え、ゲームの流れを変える。変化こそが、イメージリーダーの真価である。

 優れたチームには、3人の別々のリーダーがいる。それを指摘したことは、平尾氏の慧眼だ。だが、見落とされているリーダーがいる。それは、チームメンバーや後輩を育成する「ドリルリーダー」である。監督やコーチが担うことも多い役柄だから、スポーツチームのリーダーシップとしては、見逃されてしまうこともあるだろう。だが経営組織では、人材育成は、なくてはならないリーダーシップのあり方でもある。

リーダーシップの脳科学

 これまでの経営管理の考え方では、部下を統率して業務を遂行するためのリーダーの行動と、部下の気持ちや人間関係に配慮して、チームワークを醸成していくためのリーダーの行動が強調されてきた。「職場の人々の業務を管理するのに、どれほど長けているか」という面と、「職場の人間関係の軋轢に、どれほどうまく対応できているか」という面である。