多くのリーダーシップ改革プログラムは、意識の世界で、あるべき動き方について理解させる内容が多い。しかし、意識の世界でいくら理解をしても、なかなか行動が変わらないことを多くの人が経験している。それは、頭に思い浮かぶ行動の選択肢が変わらないからである。

 例えば、ある課長が、部長から企画書の提出を求められたとしよう。その際、「いつやろうか」「何から手をつけようか」という論点が意識の世界にサッと思い浮かぶ人と、「誰にやってもらおうか」「その人とどのようにゴールやスケジュールを握ろうか」という論点が思い浮かぶ人とでは、その後の行動が異なる。

 前者は自分で率先して行動し、後者は部下に権限委譲するだろう。頭に思い浮かぶ論点や選択肢は、無意識の世界によって規定されている。このため、前者の課長のようなタイプの人は、意識の世界で「もっと部下に仕事を任せよう」と決心しても、いざ、それが必要な場面に出くわすと、「部下に任せる」という選択肢が頭に浮かんでこないのだ。無意識の世界のメカニズムは、決心しただけでは変わらない。

 このため、無意識の世界のメカニズムを理解した上で、望ましい方向に自己の情動を軌道修正する訓練に取り組む必要がある。例えば「親和動機」の強い人は、意識的に考え方の異なる人、利害の対立する人に自ら働きかけるようにするのだ。そうすることで、従来は入ってこなかった刺激が、五感を通じて無意識の世界に入ってくるようになる。

 人間は新しい刺激に触れると、漠とした不安を感じる傾向がある。これは一見悪いことのように感じられるが、実は無意識の世界が新しい着眼点を探し求めてもがいている状態であり、視点を変える上では望ましいことなのだ。1~2週間行動を変えたぐらいでは何も気づかないが、それを3ヵ月以上続けていると、ある日突然「あれっ」と思う瞬間が出てくる。

 それが、無意識の世界が新しい視点を生み出し、意識の世界に投げ込んできた瞬間だ。そこから自分のリーダーシップを従来とは異なる角度から捉えることができるようになり、「こうすればよかったのか」という見解に行きつく。そして、自らのリーダーシップに変化が生じる。こうしたリーダーシップ改革こそがいま求められているのだ。