詳しく説明しないが、自己資本利益率は、正味現在価値の実現分が入るので、株式市場の平均利回りよりも高くなる。これらによって、株主資本コスト、ひいては事業報酬が高くなり、電気料金値上げ幅が大きめに出ることになる。ただ、これらはいずれも、審査のルール自体がそうなっているのであって、今回、作られた特例ではない。

算定に使うβ値が大きすぎる

 問題は、たとえ、このルールを前提としても、算定に使うβ値が大きすぎるという点にある。現在の東電のβ値は1.5程度だが、電力各社平均の0.9を使って事業報酬率を3.0%としたとのことである。

 しかし、電気料金審査専門委員会による「査定方針案」を見ると、過去7年間のデータでは、電力会社は各社とも、0.4~0.6程度の水準にある。この推定期間には震災後の期間が1年以上含まれており、東電と東北電力が0.58と0.53と突出して高く、電力他社は0.4~0.5の水準にある。

 震災後のデータでは、被災した東電と東北電力のみが、それぞれ1.49と1.46と高い数字を示しており、電力他社はおおむね0.6~0.7の水準である。

 電気料金算定の基礎となる総括原価は、震災や原発事故といった特殊な事情に影響を受けないように、いわゆる特別損失は除いて考えることになっている。つまり、電気料金算定の基礎となるデータは、震災や原発事故といった特殊な事情に影響されていないものでなければならない。

 したがって、原発事故により、経営の不安定性が増したため、株主が高いリターンを要求するようになった部分を、すべて電気料金利用者に転嫁するのは妥当とは考えられない。

 資源エネルギー庁によれば、2011年3月31日までの7年間のβ値平均は0.44である。2011年3月11日以降のデータが入っているので、厳密には事故の影響を除けてはいないが、現状では、0.44がもっとも適切なβ値であろう(計量経済学的に細かい問題はあるが割愛する)。