これは何も筆者だけの主張ではない。低迷するP&Gに、オープンソースイノベーションという概念を導入して、業績を急回復させることに成功したA.G.ラフリーも、その著書『ゲームの変革者』(日本経済新聞出版社)の中で「イノベーションはR&D部門の仕事だと思ったら大間違いだ」と述べているし、今やイノベーション学のグルとなった感もあるハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセンは、その著書『イノベーションの解』(翔泳社)において、「成功のカギは人事部である」と述べている。つまり、イノベーションの推進というテーマにおいて、人事部は重大な責任を負っているのである。

 この様な立場に立って考えを推し進めると、多くの企業が掲げている「どのようにして創造性を高めるか?」や「クリエイティブ思考をどう鍛えるか?」といった論点は、そもそも問題設定の段階から誤っているということになる。真に問題になるのは、「人材の創造性を阻害している組織要因は何か?」であり「人材のクリエイティビティを引き出すリーダーシップとはどのようなものか?」という問いであるべきだろう。

 分析心理学、行動心理学に続く「第三の心理学」を提唱したエイブラハム・マズローは、その著書の中で、創造性は誰にでも備わっているものであり、従って、問われるべきは「人間は、どのようにして創造的になれるのか?」ではなく、「人間の創造性の発露を損なっているのは何か?」である、と指摘しているが、「日本人」を「人間」に置き替えているだけで、基本的に同じことを主張している。

 それでは、「個人」が持っている創造性を、「組織」の創造性に昇華するためには、どの様な組織開発・人材開発の取り組みが必要なのだろうか?一足飛びにこの答えに飛びつく前に、まずは近年、イノベーションを継続的に成功させている企業に、共通してみられる要素を次回において検証してみたい。