これは端的に、「組織の問題」に起因している。多くの領域において個人として発揮されている創造性が、企業組織になるとさっぱり発揮されないというのは、つまり組織が個人の創造性をうまく引き出せていないということであって、端的に組織論の問題なのである。

 先述した日本人による数々のイノベーションの多くが、個人の才能に依拠したものであることに注意してほしい。企業組織がかかわった事例でも、例えばゼロ戦やウォークマン、新幹線といったケースではカリスマ創業者(ウォークマンのケースにおける盛田昭夫)か、あるいは全権を持ったスターエンジニア(ゼロ戦における堀越二郎技師、新幹線における島秀雄技師、ウォークマンにおける盛田昭夫)の存在があり、組織力よりも個人としての力量の発露が、イノベーションの原動力となった側面を否定できない。

 つまり、この様に事例を並べて考えてみると、日本人は「個人」になれば世界トップレベルの創造性を発揮するのだが、これが「組織」になるとからっきしダメになる、ということが示唆される。これはどうも前々からの「日本の組織」の性癖だったらしく、例えば真空管や原子力の研究を通じて「日本のものづくり」に大きな貢献を残した西堀栄三郎は、84年に出版された著書『石橋を叩けば渡れない』(生産性出版)の中で、既にほぼ同様の指摘をしている。何も今に始まった話ではないのだ。

誤解2:イノベーションは
R&D部門の仕事である

 これが二つ目の誤解につながる。筆者が指摘する二つ目の誤解とは「イノベーションはマーケティング部門とR&D部門のミッションである」というものだ。しかし、これまで述べてきた様に、日本におけるイノベーション停滞の構造要因が「組織」にあることが明白である以上、企業において組織開発の責を担う人事部門が、イノベーション推進のミッションを背負わずにいることはできないと言える。

 もちろん組織機能の上部構造としての技術開発、商品開発の責はR&D部門、あるいはマーケティング部門に帰せしめられるべきだが、下部構造としての「人材の創造性をフルに発揮せしめるような組織や風土の構築、リーダーシップの育成」については、人事部は大きな責任を負っている、というのが筆者の考え方である。