この破壊力は何も中国に限った話ではなく、全世界的に発露している。例えばスペインで放映されたクレヨンしんちゃんは、カトリック的なタブーに保護されてきた無垢な子どもたちに、強烈なインパクトを与えて熱狂の渦に巻き込み、その結果、ショッピングセンターや街頭で尻を露出して動き回る子どもたちが大量発生したために、放映禁止になってしまった。尻を露出して動き回る子どもを大量発生させることの是非はあるものの、このエピソードはいかに日本発のアニメコンテンツが、破壊的な浸透力を持っているかということを示している。

 その他の分野を見ても、例えば文学の世界では、千年前に世界最初の長編文学である紫式部の源氏物語を生み出している。しかもこれは女性作家の手になる文学である。女流作家による長編文学と言えば、エミリーブロンテの「嵐が丘」が一般的には「最初」と考えられがちだが、ブロンテが「嵐が丘」を著したのは1847年だから(しかも執筆時は男尊女卑の風紀が強かったため、ブロンテはエリス・ベルという男性名を使った)、時代的には千年ほど先んじていたことになる。

 また、現代に目を転じてみれば、川端康成、大江健三郎の二人がノーベル文学賞を受賞しており、また谷崎潤一郎と西脇順三郎の二人が、正式な受賞者候補として選考プロセスに乗っている。蛇足ながら、これまでにアジアからのノーベル文学賞受賞者は1913年にインドのラビンドラナート・タゴールが受賞している他は、2012年にやっと中国から受賞者が出ているのみで、やはり日本が突出している。

浮世絵が西洋美術に与えた衝撃

 では美術の世界ではどうだろうか?この領域についても日本人の創造性はトップクラスにあると言っていい。例えば、19世紀後半になって行き詰まりを見せていた西洋美術の世界に、新たな地平を開かせるインスピレーションを与えたのは、他ならぬ日本の浮世絵である。

 当時の日本において、浮世絵はその芸術的な価値を全く評価されておらず(そもそも芸術という概念がなかったということもある)、当時隆盛しつつあった陶器の貿易において、運搬時の陶器破損の防止のための「包み紙」として、大量にヨーロッパに渡った。ところが、彼の地の人々はその包み紙に描かれている絵の芸術性の高さに驚愕し、これが流通して多くの芸術家に刺激を与えることになったのである。