たとえばICSの先輩の安田隆二教授です。マッキンゼー時代からコンサルティングの世界でグローバルに活躍し、A.T.カーニーに移ってからはアジアの代表をしていたという経歴からしてさぞかし英語が上手そうにみえます。しかし、安田さんと英語を使う仕事ではじめてご一緒したときは、軽く驚きました。独特のクセがある発音で、文法もわりと不正確。もちろんそんなことは気にせずよくしゃべる。大前研一さんも、とにかくバンバン議論しますが、英語そのものはネイティブっぽくはありません。ファーストリテイリング社長の柳井正さんにしても流暢な英語ではありませんが、どんどん話して、相手を納得させます。

 英語が必ずしも流麗でなくても、コミュニケーションが上手な生身の人間をモデルにすることが大事だと思います。ここで挙げた方々は、面白いことに、日本語で話しているときと英語で話しているときとで、受ける印象にまったく違いがありません。英語でも日本語でも、同じ安田さんが安田さんスタイルでコミュニケーションをしているだけでありまして、まったく変わりません。英語そのもののスキルよりも、コミュニケーションの内容、姿勢、スタイルがものをいうのです。

 かつて日本人と同じくらい英語が苦手だった韓国人が、今ではだいぶ得意になっているのはなぜでしょうか。大きな理由の一つは、韓国の定年が早いこと。45歳で定年という企業がむしろ普通です。45歳で会社から放り出されてしまうのですから、若いうちからその身の振り方を真剣に考えなければなりません。英語を勉強する人が増えたのも、職を得るために海外に出て行かなくては、という切実な必然性があるからでしょう。

 ようするに、英語を話さなくてはならないという必然性があり、英語を話す必要性を強く感じればコミュニケーションが成立するところまではだれでもいけるのです。英語以外でも同じ話で、たとえばマブチモーターでは中国語がペラペラの人がたくさんいます。中国に工場がたくさんあるので、中国語が話せなければ仕事にならないからです。

 英語を勉強し、壁にぶつかっているビジネスパーソンは多いと思いますが、難しく考えることはありません。必要に迫られれば英語はしゃべれるようになります。

 大切なことは“英語がそれほど上手でもないのにコミュニケーションはすごい人”を見つけてよくよく観察することです。僕にとっての安田隆二さんのような人です。英語ではなく、その人のコミュニケーションの仕方を丸ごと観察して、まねて、学ぶ。これが英語でのコミュニケーション力をつける王道だと思います。

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