ICSのMBAプログラムには、20ヵ国以上から生徒が集まってきています。アメリカ人など英語がネイティブな人もいますが、割合としては中国人や韓国人などアジア系の方がずっと多い。日本人は10%-20%に過ぎません。私はいつも学生に、「これがグローバル化した世界の姿なんだよ」と言っています。以前までは、ビジネスで英語をしゃべっている人はそもそも英語圏が多かった。ところがグローバル化が進み、現在その割合はだいぶ下がりました。そもそも母国語が英語でない人が、業務上、国際語が英語だから、ということでしゃべっていることが多いのです。

 今日の講義で学生に挙手してもらったのですが、ICSの学生の75%は英語が母国語ではありません。ICSの姿はグローバル化したビジネス環境の縮図です。グローバル化が進んだ世界では、「成り行き上、しょうがないから英語を使う」という人が多数を占めるわけです。そうなると、お互いに配慮しつつ、何とか意思疎通を図っていく、そういうコミュニケーションが当たり前になっています。

 日本人にとって、アメリカ人とタイ人の英語のどちらがわかりやすいかといえば、タイ人であることがわりと多い。なんといっても一番聞き取りやすいのは日本人の英語です。お互いに母国語ではない言葉を使っているので、自然と相手に対する配慮が生まれる。

 反対に、アメリカ人やイギリス人は相手が英語を使うのを当たり前と思っているから、この配慮に欠ける面があります。本来であれば「イヤー、迷惑かけて悪いんだけど、成り行きで英語が共通語になっているから英語でやらしてもらうね。日本語できなくてゴメン!」ぐらいに思うのが筋なのですが、英語ネイティブの人が自分のペースでガンガン話す。当然のことながら非ネイティブの人々にとって聴き取るのは難しい。

 グローバルな文脈では、英語ネイティブの人は、非ネイティブの人に対して配慮しながら話すべきなのです。それがむしろグローバル化のマナーだと僕は思います。ですから配慮なくバンバン話すネイティブの人々とやり取りするときには、「ということで、ゆっくりめでヨロシク!」とこちらから「正当な要求」をするぐらいでちょうどよいのです。

 日本人の英語勉強法も変えていかなければなりません。これまで世界で通じる英語のモデルとされていたのは、ネイティブの英会話の講師が使うような、「こなれた英語」でした。たとえば、"I think it’s OK."というところを、"It goes."みたいに表現する。"Hello"じゃなくて、"What’s up?"とか挨拶する。そのような英語が、「上手な英語」とされていますが、あれはよくない。

 僕の友人の中竹竜二さん(日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)は「鈍足だったら、速く走るな」といっていますが、言いえて妙です。ICSの同僚でマーケティングを専門としている藤川佳則さん、この人はとにかく英語が上手です。洗練された英語を実に流暢にしゃべる。それはそれでいいのですが、はじめからこういう人を目指してしまうのがよくないんですね。目指すべきモデルは少し違うところにあると思います。