ステージ‐ゲート・プロセスの3つの問題点

 ステージ‐ゲート・プロセスを勝ち抜くために、エンジニアは最初から事業性を考えなければなりません。以前なら「何かの役に立ちそう」「これ、面白いね」というだけで開発を続けられた技術も少なくなかったと思いますが、単に面白いだけでは認めてもらえません。

 技術開発の初期段階で、ゲートキーパーは「その基礎技術から、将来どの程度の規模のビジネスが生まれるのか」と聞いてきます。そんなこと、わかるはずがない。何に使えるのか、どんな製品ができるのかさえわからないケースが山ほどあるのです。

 エンジニアは仕方なく、鉛筆をなめながら数字をつくります。そして1年後、「お前の言った通りになってないじゃないか」と言われて、また鉛筆をなめてウソを膨らませていく。ここには、大きく3つのマイナスがあります。

 第1に、エンジニアたちが事業性に対するこだわりを過剰に持つようになる。確かに、事業性を無視して「面白いことだけやりたい」と思っているエンジニアが多すぎるのは問題です。しかし、事業のことを考えるのが苦手な人たちに対して、一律に同じプロセスを適用するのは逆効果でしょう。

 第2に、ウソをつくことに少なからぬエネルギーが使われる。これもよくない。新しい技術が生まれようとしているとき、根拠をもってその事業性を言い当てることなど不可能です。

 にもかかわらず、事業のことをよくわかっていないエンジニアが「いかにゲートをパスするか」だけを考えて、小手先のテクニックや工夫に血道を上げるのは企業にとってリソースの無駄遣いです。そんな時間があるなら、技術を深掘りすることに集中すべきでしょう。

 第3に、どのような研究開発が将来花開くかを見極める人、つまり目利きが育たなくなる。実はこの点が、最も影響が大きいかもしれません。

 目利きにも様々なレベルがあります。会社全体の技術戦略を担うCTOもいれば、技術畑で育った現場マネジャーもいます。それぞれのレベルで優秀な目利きをどの程度揃えているかが、企業の技術力を左右します。

 目利きの育成に、近道はありません。失敗して失敗して、たまに成功を経験して、反省したり大喜びしたりしながら育っていく。そういうものです。

 一方のステージ‐ゲート・プロセスは、客観的なデータらしきものをベースに、基本的に合議で合否を判定します。1人ひとりの責任意識は薄まり、誰も責任を取らなくなる。「このプロジェクトを継続すべきかどうか」、夜も眠れないほど悩む人はいなくなります。本当に真剣に考えるというプロセスを経なければ、目利きは育ちません。