たとえて言えば、自動車のエンジンの動きを伝えるギアにD(前進)、N(中立)、R(後進)があるように、モチベーションにも前向きと中立と後ろ向きがある。さらにややこしいことに、人間を動かすエンジンでは、D(前進)は1段ギアなのに、R(後進)は5段変速と思われるのだ。

 回避的モチベーションのほうが、行動を促す力が強い。仕事や勉強やスポーツでは、ミスしたら叱ったり罰を与え、「恐れ」や「悲しみ」のような不快を回避させようとすると、結果として望ましい行動につながるものだ。だからこれまでは、罰をちらつかせ、ミスを叱る減点主義で行動抑制系の指導法が幅を利かせてきた。

 しかし人は、「悲しみ」「恐れ」「怒り」「驚き」「嫌悪」のような感情を感じる場面に出くわすと、不安が掻き立てられ、気持ちが萎えてしまい、前向きな行動を取れなくなってしまう。不快を回避する力のほうが、われわれを動かしやすいにもかかわらず、回避的モチベーションに長らく触れていると、意欲をダウンさせ、われわれを受け身にさせてしまうという、よくない副産物が待っている。

 だから、叱って行動を修正するよりは、うまくいったことを褒めて、「喜び」の感情をもたらす、加点主義で行動賦活系の指導法が望ましいことになる。

 明日の朝、職場や学校で、周りの人たちの顔色を眺めてみよう。もし、暗い顔つきをした人ばかりであれば、そのグループには自発的なモチベーションはない。反対に、6分の1かそれ以上の人たちが、喜びに満ちた笑顔を見せていれば、そのモチベーションは、まわりに伝播していくものだ。

モチベーションの方向性

 第2のモチベーションの方向性とは、どの方向にわれわれの力を集中させていくかを示すものである。一言でいえば集中力にあたる。

 われわれがもつ精神的リソースは限られている。方向性が定まらなければ、いかに活力に満ちていたとしても力が拡散し、遅かれ早かれリソースが枯渇してしまう。だから、たくさんの可能性の中からいくつかだけを選択し、それに意識と努力を集中していくことが必要となる。