自分を試すためにマッキンゼーに入った

小沼:現在、日本の企業ではどうしてもスキル偏重の人材育成に偏りがちで、もともと創業時にあった社会を良くしたいというミッションや想いがどんどん見えなくなってしまっていると思います。本来はもっとミッションや想いに焦点をあてて人をつくるべきところを、現在のスキル偏重といえるようなシステムでは、リーダーシップは育たないと思うんです。伊賀さんもこの本で書かれていますが、社会を変えるリーダーが増えれば日本企業はもう一度元気を取戻すのではないかと思うんです。

伊賀:そうですね、社会を変えるには、少数のカリスマ型のリーダーだけではなく、リーダーシップの総量が重要なんです。私はそのために一番適しているのがNPOだと思っていて、クロスフィールズにはその点でも注目しています。

 ところで、友達みんなが社会人3年目で青臭さがなくなったのを見たのに、小沼さんはなぜ企業に就職しようと思ったのですか?就職してしまえば自分にも同じような圧力が働くと思いませんでしたか?

小沼:それに対しては強い危機感があったので、どうやったら自分がそうならないで済むんだろうと考えていました。マッキンゼーには、僕が言っている青臭さとは対極の、弱肉強食の社会のエリート集団というイメージがあったので、敢えて自分とは合わない環境に身をおいてみようと思って入りました。そこで自分を保っていられるかどうかを試そうと思ったんです。だから会社に対して防衛壁のようなものを無意識に張っていましたね。そのため「ぼくは3年後にやめます」っていう辞表を尊敬する起業家の方々に渡しておいたんです。僕がもし志を捨てて、青臭さを失っていたら、この辞表を勝手に出してくださいって。

伊賀:えー、そうなんだ(笑)。でもそんなものを周りに渡していたってことは、自分も変わってしまうんじゃないかという不安を感じていたということですね?

小沼:怖かったですね。だからそんな青臭い自分たちを忘れてしまわないようにと、月一回の飲み会を始めました。一橋大学の部活の同期4人で始めた小さな輪は、徐々に友人や会社の同僚などに広がって、勉強会に発展しました。皆の情熱が冷めないように「情熱の魔法瓶」と言う暑苦しいコンセプトを作りました(笑)。それが母体となってできたのが、現在のクロスフィールズなんです。いま働いているメンバーの多くが、この勉強会のメンバーです。

伊賀:なるほど。逆に言うと、それくらい強い志を持っている人たちでさえ、企業人になってしまうと、ひとりでそれを維持することは難しいってことなんですね。そういう時、定期的に集って志を確認し、流されそうになる友達をみんなで救い出すのは、なかなかいいアイデアです。