多数のコンセプト仮説を同時並行で走らせる

 ウォーターフォールやステージゲート法の開発アプローチでは、早い段階でコンセプト仮説を絞り込み、少ないテーマに集中したほうが開発の質とスケジュールを管理しやすいという考え方が前提にあります。そのため、前工程が完了するまで次工程に進まないことで手戻りを最小限にする、そのために各工程の間にゲートを設け、ゲートの評価項目をクリアしたテーマだけを次の工程に進めるという方法をとります。しかし、飛躍的なイノベーションを実現するうえでは、このアプローチには多くの限界があります。

1.各工程の評価項目に間違いがないことが前提になっている
2.顧客からのフィードバックを得るプロセスがほとんどない
3.バッチサイズが大きく、後戻りのコストが高くなる
4.誤りや失敗、想定外の発見を積極的に活用する余地がない
5.当初の開発目標の見直しや変更ができない

 上記の限界と失敗を恐れる心理とが重なることで、さまざまな問題が発生します。例えば、ゲートをクリアすることに集中してしまい、初期段階から過剰な投資をしてしまうといった問題が起こります。あるいは、推進していたコンセプト仮説の致命的な欠陥がわかっても、別案をすべて没にしてしまったために乗り換える案がなく中断できない、といった事態に陥ることも少なくありません。

 人間中心イノベーションのアプローチでは、失敗や誤りを積極的に活用し、想定外の事態に対応しながら、成功する目標地点を創発的に見出していきます。ポイントは、初期段階において多数のコンセプト仮説を同時並行で進め、それぞれのテストで得た学びをお互いのコンセプト仮説にフィードバックしていくことにあります。ウォーターフォールやステージゲート法では無駄と考えられているアプローチのほうが、結果的にプロジェクトの質はもちろん、スピードもはやくなるのです。

 人間中心イノベーションにおける開発プロセスの特長は以下の通りです。

1.バッチサイズを最小化する
2.常に顧客からのフィードバックを得る
3.誤りや失敗を積極的に受け入れ、そこから学ぶ
4.コンセプト仮説間で学びを共有する
5.当初のコンセプト仮説や開発目標に固執しない

 飛躍的なイノベーションの成功ポイントは、すごいアイデアを発想し、それをもとに製品・サービスを完璧に仕上げ、一気に市場に展開していくことではありません。本当に重要なのはアイデアの質や完成度ではなく、顧客を巻き込んでコンセプトを改良・強化していく反復の質とスピードです。顧客から素早く学び、反映する能力が長期的な競争力の源泉になることを理解してください。

 

1.学ぶためにプロトタイプを作る
2.バッチサイズを小さくして学びの速度を最大化する
3.学びのプロセスに製品そのものを組み込む

あなたの組織の開発プロセスでは、プロトタイプや試作品はどのように位置づけられているでしょうか。学びの手段としてプロトタイプを作るとしたら、どのタイミングで、どのような学びが可能になるでしょうか?

 『イノベーターのための問題解決法』は今回で終了です。半年間おつきあいいただき誠にありがとうございました。当コラムの関連で何かご意見・ご質問等がございましたらshirane★daishinsha.jp(星印を半角のアットマークに変えてください)までお気軽にご連絡ください。