学習のプロセスとしてのプロトタイピング

 今回は、「具体的に作る=スピーディーな反復プロセスでコンセプトを改良・強化する」ステップです。人間中心イノベーションのプロセスを使って策定されたコンセプト仮説は、顧客にとってはシンプルですが、それを実現するために企業が提供すべきことはとても複雑かつ広範囲に及びます。単にプロトタイプを作って従来通りのテストをするだけでは、コンセプト仮説の成否に関わる要素全体を捉えることができません。

 人間中心イノベーションでは、コンセプ仮説の前提となっている重要な仮説を網羅的に検証するためにプロトタイプを作ります。ポイントは、プロトタイプの出来映えではなく、どれだけ学びが得られるかということになります。

 このコラムの第2回で、「改善や改良のプロセス」と「人間中心イノベーションのプロセス」をご紹介しました。プロトタイプを使った従来の評価方法が「改善や改良のプロセス」をベースにしているのに対して、ここでは「人間中心イノベーションのプロセス」を高速で回すことでコンセプトを改良・強化し、仮説やリスクを検証しながら不確実性を下げていきます。

 まず、コンセプト実現の前提となっている仮説をリストアップします。ここに至るプロセスで、すでに多くの重要な仮説が明らかになっているはずです。それらをベースに、ターゲット顧客、提供価値、成長エンジン、事業構造、テクノロジー、チャネル、パートナーといった項目について、仮説を網羅的に洗い出します。

 次に、洗い出された仮説に優先順位をつけます。優先順位の基準は仮説の重要度と不確実性が基本になります。それらに加えて、少ない投資でスピーディーに検証できることを考慮する必要があります。飛躍的なイノベーションを目指す場合、持続的イノベーションで使われる市場予測や精緻な事業計画は役に立ちません。人間中心イノベーションでは、顧客から素早く学び、反映するといった検証プロセスをスピーディーに反復することによって実際的にリスクを下げていきます。

 優先順位が決まったら、プロトタイプを作成します。想定していなかった構成要素や各構成要素間の依存性など、プロトタイプを作ってみることではじめてわかることもたくさんあります。最も根本的な仮説は簡易なプロトタイプを現場に設置する、あるいはプロトタイプとともに一日を過ごしてみるだけで明らかになるかもしれません。

 その次のレベルでは、少数の顧客に参加してもらってテストを行います。顧客に参加してもらうことで以下のメリットが得られます。

1.顧客の考えではなく、実際にどう行動するかがわかる
2.想定外の反応について学ぶことができる
3.現物を体験することでユニークな反応が出やすくなる