第2に(上記引用文2・3)、社会性の実現が、経済的価値(利益)創出の条件である、という主張だ。ここにおいて、経済性追求における社会性実現への要請は、第1の主張よりも強くなる。社会性の追求が経済価値を実現する一つの方法にすぎないという段階を超えて、社会性の実現を伴わない利益は追求されるべきではない、という一歩踏み込んだ主張である。

 Tocqueville (1838) [注4]の言う「啓発された自己利益」ないし「見識ある自己利益」と呼ばれる考え方(enlightened self-interest)は、多様な利害関係者の便益を高めていくことが、結果的に自己の財務的パフォーマンスに返ってくることを意味する。「利他的利己主義」ともいわれるが、第1と第2の考え方を包含したものと個人的には解釈している。

 第3に(上記引用文4・5)、当該論文の中には社会性の実現が経済性の追求に並んで企業目的の一部であることを示唆する言説もある。いわば社会性と経済性の同時実現を企業目的とする考え方である。因果関係を図示すると下図のようになる。

[注4]Tocqueville (1838) Democracy in America, Saunders and Otley: London.

[注5]岡田(2012a)「『包括的ビジネス・BOPビジネス』研究の潮流とその経営戦略研究における独自性について」『経営戦略研究』,第12号2012年6月.
岡田(2012b)「戦略理論の体系と『共有価値』概念がもたらす理論的影響について」『慶應経営論集』29(1):121-139.