日本的人事管理を特徴づけるものといえば、幅広い異動と遅い昇進だろう。長期の雇用を前提として、定期異動によってさまざまな仕事を経験させる。その職場で達成した成果に基づいて、性急に昇進を決めることなく、社員同士をゆっくりと競争させ、時間をかけて本人の能力を見極める。

 その根幹をなす社員の評価というのは、長年の仕事や対人関係全体から判断された人物の総合評価というものに近いだろう。右脳主導の評価を通じて、その人のもつエネルギーやオーラやプレゼンスなどを、感覚的に評価する。しかし、人の評価は短期間には固まらないから、「あの人はデキる」という評判が確立するまでじっくりと時間をかけ、だれもが納得する形で昇進を固めていく。

 しかし、時代の変化は想像以上に速い。グローバル化した現代だから、「最初の10年間は人事は塩漬けで、昇進格差はつけない」というような悠長なことは言っていられない。逆に、外資系企業では、人材の将来性を買って、若い時から責任ある立場を経験させ、結果をベースに評価に白黒をつけることが多い。

「人は5分で判断できる。1年も一緒に過ごしていれば、ポテンシャルの高さは誰の目にも明らかだ。そういう客観性と納得性がGEにはあった」(『世界で通用するリーダーシップ』東洋経済新報社 2012年)。

 人事評価についてこう述べているのは、ゼネラル・エレクトリック社(GE)の航空機部門、メディカル部門の長を経て、現在ノバルティス ファーマの社長となった三谷宏幸氏である。人事評価においても、それくらいのスピード感をもって人材を引っ張り上げないと、世界に通用する40代の社長は生まれない。

 コンピテンシー評価が求める分析的で左脳的な評価が幅を利かせていても、日本人も中国人も東洋的な発想をもつものだから、なんとなく自信がもてないかもしれない。全体的印象を重視する右脳的な評価であったり、人物評的な色彩を帯びた総合評価でないと、どこかしっくりこないだろう。それがいけないというわけではない。

 問題なのは、評価にかける時間の長さであり、スピード感の欠如である。ゆっくりと評価をすれば、なるほど公平で納得感が高まる。とはいえ、20年もかけて優秀な人材を見極めるというのでは、日本企業の人材評価法は、非効率きわまりない。