人間の脳を取り出してみれば、左脳と右脳の2つの半球が完全に分かれている。その役割も、比較的独立している。左脳は分析的、論理的、言語的な精神活動に優れ、右脳は全体的、感覚的、情動的な活動に秀でている。そして、その間をつなぐ太い神経線維の束である脳梁を通して、2つの脳半球が連携しあっている。役割の違う2つの半球が、長年連れ添った夫婦のように、見事な連携を取り合っているのが、人間の脳の姿なのだ。

 ただし、人類全体の9割以上は右利きなので、古来、左脳の優位性が信奉されてきた。右利きか左利きかは生まれてくるときにすでに決まっているのだが、この圧倒的な比率の違いから、あらゆる文化で、理性の優位性が信じられてきた。言語を介した理性が、喜びや怒りや不安といった感情より、優位に立っていると思われてきたのである。

 部分vs.全体、理性vs.感情など、人間の情報処理は、その得意分野が左脳と右脳に分かれている。ただし、ほとんどの精神活動は、両半球が協力的、連携的にかかわる複雑なものなので、「左脳傾向」vs.「右脳傾向」などと単純に二分論として考えることはできない。要するに、この二つの精神活動は、どちらが優れているというものではなく、両方ともにわれわれの適応に必要なものである。

 同じように、総合評価と分析的評価は、どちらが優れているというものではない。全体的印象やその人のオーラのようなものを感じる全体評価と、行動やスキルといった部分を切り分けて、細かに緻密に判断する分析的評価は、評価のあり方の違いだから、優劣をつけるのではなく、両方を連携させて活用するのがよい。

左脳的評価の優位性

 人事評価における現在のトレンドからすれば、行き過ぎた成果主義評価を修正・補完するために、コンピテンシー評価や360度多面評価が見直されている。コンピテンシーといえば聞こえがいいが、細かに分けられた100個以上の項目によって、能力や行動や情意の要素を評価することが求められている。区別することが難しい要素を、詳しく識別して評価する必要がある。いたって左脳的な評価ばかりが求められている。

 このトレンドは、日本の組織における評価に合っているのだろうか?