コスト削減の積み重ねではなく、コスト構造を抜本的に見直す

 ドイツ企業はグローバル化に適応しつつ、新しいイノベーションのスタイルを身につけ始めた。その好例が、シーメンスのハイテク医療機器である。CTスキャンのような高度な断層撮影装置を、ドイツと中国の拠点が協力して開発し、設計が終わればただちに製造を担う中国の工場に引き継ぐ。ドイツ国内にマザー工場があるわけではなく、1台目の新製品から中国で製造されるのである。

 グローバルな分業体制を構築することにより、シーメンスは製品のコスト競争力を大幅に高めた。言わば、スマート・イノベーションである。スマート・イノベーションとは、機能向上の対価を顧客に求めるようなものではない。プロセスやビジネスモデルの変革によりコスト構造そのものを刷新し、低価格で高い顧客満足を実現するイノベーションである。

 既存の最高スペックの製品に比べれば機能は若干劣っていたとしても、4~5割安い価格を提示できれば、多くの顧客を振り向かせることができる。そのいい例が、インドのタタ自動車が生産する超低価格車〈ナノ〉や、アップルの〈ipod〉である。

 シーメンスのようなプロセス革新は、ドイツの幅広い産業分野で推進されている。今後いっそうのグローバル化が進むことを前提とすれば、コスト構造の抜本的な見直しは不可避である。既存のプロセスモデルをベースに、部品単位で数%のコスト削減を積み上げていく手法には限界がある。既存モデルをいったん忘れて、ゼロから製品やサービスのコストを考えなければならない。それは時代の要請である。