改善や改良のプロセス

 人間中心イノベーションのプロセスを、改善や改良(漸進的なイノベーション)との比較でみていきましょう。改善や改良では、既成のルールに沿って、1.具体的に理解する=製品そのものに焦点を当てて顧客の好みや要望を直接的に聞き出し、2.具体的に作る=発見された問題をそのまま受け取って、その根本原因を特定し、最適な解決策をつくります。

 ポイントは、主観を排除し、測定可能な要素に分解し、需要を予測し、リスクを下げることです。需要見込みの高い新しい製品を投入し、売上のS字カーブを押し上げていきます。改善や改良では、既成のルールの下で自社が持っている知識を最大限に活用できる企業が有利になります。

 

人間中心イノベーションのプロセス

 一方、人間中心イノベーションでは、顧客の隠れた欲求や願望を活用することで、新しい競争のルールをつくることがポイントになります。そのプロセスは大きく5つのモードに分けられます。

 

 はじめに、1.市場の全体像を把握し、S字カーブから逸脱する空白を見つけ、目指すべきイノベーションの方向を特定します。方向に沿って、2.具体的に理解する=顧客の実際の活動や欲求を広い視野で理解します。観察やデプスインタビューといった手法を使って、製品の直接的な用途だけではなく、より広い状況における顧客の活動や考え、感情を理解します。共感や直感といったスキルがここで重要になります。

 次に、3.抽象的に理解する=問題をリフレームするモードに移ります。現実で学んだことから重要なパターンを発見し、顧客の欲求や願望について鍵となるインサイトを獲得します。獲得したインサイトを使って、4.抽象的に作る=革新的なアイデアを発想します。プラットフォームやビジネスモデルなど、製品単体にとどまらない数多くアイデアを生み出し、それらを一連のシステムとして複数のコンセプト案に統合します。

 そして、5.具体的に作る=イノベーションのロードマップを作り、プロトタイプの作成、評価など実現化へ向けた活動を進めます。スピーディーな反復プロセスによってイノベーションプランを改良、強化し、リスクを下げていきます。