需要と供給のミスマッチ

 話をランキングに戻す。それにしても、この「いつもの顔ぶれ」はある意味凄い安定感だ。僕が大学生だった30年近く前と比べても、三菱東京UFJ銀行が三菱と東京とかにバラけていた程度で、ほとんど変わっていないのでは。JTBも太古の昔から上位にいるような気がする(そんなに大学生は旅行好きなのか?)。

 ……と、ここまで書いて気になったので、30年前の1982年のランキングを調べてみた。三菱商事、三井物産、住友商事、東京海上、丸紅、サントリー、伊藤忠、日本電気、日本興業銀行、安田海上火災が「文系」のベストテン。日本電気が入っていたのがちょっと面白いが、ほとんど同じメンツだ。すさまじい安定感である。

 いい機会(?)だしヒマなので、82年のヒット曲のベストテンも調べてみた。アーティスト名でいうと1位から順に、細川たかし、岩崎宏美、あみん、中村雅俊、サザンオールスターズ、近藤真彦、松田聖子、郷ひろみ、中森明菜、大橋純子。サザンは別にしても、いまの大学生にしてみれば、誰だかわからない人もけっこういるのではないか(僕の好みの問題ですが、大橋純子はよかった。「たそがれマイ・ラブ」。小柄で地味なのに声の伸びが抜群だった)。あみん、といってもウガンダの独裁者じゃないですよ(とはいっても、大学生はアミン大統領も知らないか……)。

 冗談はさておき、考えてみれば、これほど長期にわたって「有名な会社」が変わらないということのほうが、「ラーメンを食べたことがない人によるラーメン店ランキング」の存在よりも不思議である。就職人気企業ランキングが2012年の今になっても相も変らぬ顔ぶれで占められているということは、若者の労働市場において需要と供給のミスマッチがあるということを示唆している。ここに問題の本質がある。

 ランキングにあるような確立した大企業にはすでに優秀な人であふれている。これからも当面はほっておいても優秀な人が入ってくる。真の需要は、それほど多くの人が知らない会社のほうにある。伸び盛りのベンチャー企業ばかりではない。昔からあるような会社でも、独自の価値を創造しているよい会社が日本にはまだまだたくさんある。

 そうした企業に優秀でやる気のある若者が入っていかないとすれば、それは日本の産業社会にとって大いなる損失になる。商社や銀行もいいけれど、この辺で「よい会社」の基準を再考する必要がある。この話の続きはまた来週。

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