自分の人生のゴールを自分で選ぶのがリーダーシップ

酒井:日本人には、能力の高い人しか好きなことをやれないという根強い考え方があると思います。では、余命3ヵ月と宣告されて今と同じことをしますか? この問いに「同じことをしない」と言う人には「どうして?」と問いたくなります。そうできない理由は自分にとって邪魔なものでしかないわけですから、少しずつでも排除しなければならないはずです。もちろん、好きなことをすれば生活できるとは言いにくいですが、少なくとも好きなことをせずにこの先食べていけるとは思えません。好きではないことをやっていて天才には勝てないですよ。これからさらに競争が激しくなるなかで、嫌いなことをしていて勝てるとはどうしても思えません。要するに決められず、先延ばしにしているだけなのではないでしょうか。むろん、0か100かの世界ではないとは思いますが、今やっていることは自分が選んでいるという意識を持てないと厳しいのではないかと思います。

酒井穣(さかい じょう)

フリービット株式会社取締役。NPO カタリバ理事。1972年、東京生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。Tilburg大学TiasNimbasビジネス・スクール経営学修士号(MBA)首席 (The Best Student Award)取得。商社にて新事業開発、台湾向け精密機械の輸出営業などに従事した後、オランダの精密機械メーカーにエンジニアとして転職し、2000年 にオランダへ移住。2006年末に各種ウェブ・アプリケーションを開発するベンチャー企業である
J3 Trust B.V.を創業し、最高財務責任者(CFO)としての活動を開始。2009年4月、フリービットに参画するために帰国し現職となる。主な著書に『はじめての課長の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『リーダーシップでいちばん大切なこと』(日本能率協会マネジメントセンター )『きみたちはどう迷うか』(大和書房)などがある。

伊賀:全体としてはそうだと思うのですが、酒井さんと少しだけ意見が違うとすれば、私は、日本人が全員世界で1番のものを持たないと食べていけないとは思っていないという点です。個々人の野心にはそれぞれ濃淡があって、世界を変えたいと思っている人もいる一方で、ささやかな生活で満足する人もたくさんいます。家族以外の誰にも認知されなくても、奥さんと子どもと食べるものさえあれば、それが幸せな人生だという人もいますよね?

酒井:もちろんです。僕の定義の中では、それもリーダーシップなんですよ。自分の人生をこうしたいということを自分で選んでいるわけですから。

伊賀:そうですね。私も伝えたいのは、人それぞれに自分の選んだ人生に応じたリーダーシップの取り方があるということなんです。世の中を変えたいという大きなリーダーシップだけをイメージしてしまうと、大半の人が「俺には関係ない話だ」と考えてしまいます。そうではなく、あなたの人生をどう生きたいかについてあなたが決めて、あなた自身が動くことがリーダーシップなのです。

 今は、本当はやりたいことが別にあるのに、自分を誤魔化して今の生活に満足しているフリをしている人がいます。自分が行動しないことを正当化する理由を山ほど集めて、何も行動せず、自分には他にやりたいことがあるわけではないと、無理矢理に自分を納得させているのです。

 でも、「これは本当に自分で決めた目標なのか?」と自問してみて欲しい。リーダーシップは、自分のゴールを自分で設定することから始まります。人から与えられたものをゴールにしていたら、リーダーシップは発揮できません。まずは、「自分のやりたいことは何か、人生のゴールを自分で決めていますか?」というところが第一歩です。