二〇〇四年七月、アメリカの競争力評議会(The Council on Competitiveness)が発表した通称「パルミサーノ・リポート」(“Innovate America: Thriving in a World of Challenge and Change”)に触発されてか、ここ数年来、日本産業界でもイノベーションがさかんに喧伝されています。
ところが、イノベーションは偶然の産物であることがほとんどで、方程式というものがありません。ただし、どうやら異質なもの同士がうまく融合することで生まれてくるらしいというのが世界の共通認識です。
イノベーションの一方で流行っているのが、「ロジカル・シンキング」をはじめ、論理的なビジネス・スキルの開発です。いわゆる「〜力」とか、言われるやつですね。これらは、つまるところベスト・プラクティスの学習です。
これら二つのトレンドには、決定的なジレンマが存在します。すなわち、イノベーションの創造に、論理的で合理的なビジネス・スキル(しかも要素還元的に学習される)はあまり役に立たないということです。そして、このジレンマを解決するものこそ「弁証法」といえるのです。
では、弁証法とは、どのような思考法なのでしょうか。
どのような意見や考え方にも、矛盾が存在します。この矛盾を明らかにするために、その意見や考え方に疑問を呈し、議論するというのが、「ソクラテスの問答法」です。これが一般には、弁証法の起源といわれています。
もし弁証法という言葉を聞いて、難解なイメージを抱かれるとしたら、それはドイツの大哲学者、ゲオルク・W・F・ヘーゲルの弁証法、あるいは全共闘(全学共闘会議)の世代の人たちには懐かしい、マルクス主義の弁証法などが影響しているのであろうと思われます。
また、「正・反・合」、すなわち「テーゼ」(ある命題)と「アンチテーゼ」(その命題と矛盾する別の命題)を戦わせ、ここにアウフヘーベンを起こすことで「ジンテーゼ」(これらを本質的に統合した命題)を導き出す対話法としても知られているはずです。
ちなみに、弁証法はこのような症状の人に、特にお勧めです。