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戦略を捉えなおす |
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戦略の本質は、競争優位を確立することにほかなりません。しかし、複雑化する事業環境が戦略家の目を曇らせ、間違った方向へと舵を切ってしまう企業も後を絶ちません。
なぜ、このように正しくない戦略が生まれるのでしょうか。それは、奇をてらった戦略がかえって「戦略の定石」を踏み外していることにありそうです。基本がおざなりになってはならないのです。本誌2006年3月号「戦略の定石 戦略の四角」では、戦略家に改めて「定石」の理解を促す論文が特集されています。また、基本に戻るという意味では、2005年4月号「『兵法』の戦略学」が理解を助けてくれるでしょう。兵法の理には戦略論の祖型が記されています。
ただし、いかに優れた戦略でも、その遂行能力の有無はまた別の問題です。つまり、戦略を実現する力がさらに求められているのです。2004年5月号「競争戦略のキラー・コンセプト」では、この実現する力を特集しました。構想し、立案する力、そしてそれを遂行する力を捉え直してみてはいかがでしょうか。 |
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関連論文掲載のDHBR |
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| FROM the EDITORS ― この号の読みどころ ― |
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| 利益メカニズムへの理解 |
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本特集では、『キャズム』で一躍有名になったジェフリー・ムーアが「すべての企業に『利き手』がある」(四六ページ)のなかで、再び多角化の罠について触れています。M&Aであろうと、そうでなかろうと、既存のバリューチェーンの経済性を損なわせるような拡大策、ひるがえって、規模の経済、範囲の経済が働かない多角化は競争優位を失わせると述べています。
また、ハーバード・ビジネススクール史上、ジョン・コッターの三三歳という最年少正教授の記録を塗り替え、正教授になったパンカジュ・ゲマワットが「グローバル競争とリージョナル戦略」(五八ページ)で、そしてコロンビア・ビジネススクール教授のブルース・グリーンワルドも「シンク・ローカル、アクト・ローカル」(七二ページ)で、いたずらな拡大はかえって規模の不経済、範囲の不経済を招き、競争優位を失うと警鐘を鳴らしています。
ビジネスの基本ルールは、当たり前のことなのですが、「売上げを最大化して、コストを最小化する」ことです。とはいえ、売上げを増やすには、コストも増やさなければならないわけですから、矛盾でもあるわけです。
この矛盾をいかにバランスさせ、売上げからコストを差し引いた「利益の最大化」を実現できる人こそ、戦略家といえるのではないでしょうか。経営の合理化だけでも、コストを無視した拡大策だけでも、うまくいかないことは多くの人が知るところですが、利益のメカニズムを理解できている人――もちろん、これを理解しただけで戦略家とは言い切れませんが――は少ないのではないでしょうか。
そこで、次の三冊を紹介します。
●W・ブライアン・アーサー『収益逓増と経路依存』(多賀出版)
●菊地徹『収穫逓増と不完全競争の貿易理論』(勁草書房)
●マルコム・グラッドウェル『ティッピング・ポイント』(飛鳥新社)
収穫逓増とは、要するに規模の経済のことです。先の二冊はいずれも専門書ですが、通読する必要はないでしょう。多くの経済学のテキストは収穫逓増の法則についてはあまり詳しく説明していません。
また、『ティッピング・ポイント』はまったく別分野、特に流行はどうして起こるのかについて言及した書籍ですが、S字曲線の意味、とりわけ「閾値(しきいち)」(クリティカル・マス)の概念を知るうえで、わかりやすいのではないでしょうか。ちなみに閾値とは、利益メカニズムにおいて、急激に利益が上昇するポイント、つまり収穫逓増が働き始めるポイント、ひるがえって、経営資源を投入し続けるべきポイントを意味しています。
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| FROM the EDITORS ― この号の読みどころ ― |
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| 兵法は真剣勝負から生まれた原理 |
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かつて『[高業績チーム]の知恵』(ダイヤモンド社)のなかで、湾岸戦争のデザート・ストーム作戦におけるログ・セルのロジスティックス活動が紹介されているのですが、組織における規律の意味を考えるうえで、おおいに学ぶところがありました。
また、特集論文「クラウゼヴィッツか、リデル・ハートか」と「ゲーム理論を戦史で学ぶ」では、戦わないという「戦略の選択」の合理性を再確認できました。
ちなみに、この特集をきっかけにデビッド・ハルバースタムの『ベスト&ブライテスト』(朝日新聞社)を読み直しています。かつてのロバート・マクナマラの使徒たち、すなわちMBAホルダーはいったい何を間違えたのか。この場合、『マクナマラ回顧録』(共同通信社)も併読すべきなのでしょうね。
兵法は、真剣勝負の世界から生まれてきた基本原理です。もしかすると、生半可なケース・スタディよりも、よほど有意義な洞察が得られるかもしれませんよ。
世のなかに、これほどまで企業戦略にまつわる書籍や研修プログラムがあるにもかかわらず、正しい理解に至っている人は半数、いや四分の一にも満たないのではないでしょうか。そこで特集1は、実は我々が無意識のうちに刷り込まれている『兵法』の理に照らしながら、改めて戦略論を説きます。すいすい頭に入りますよ。
「勇気ある撤退」は、もはやどうにもならなくなった時の決断であったりします。むしろ「賢明なる撤退」こそ重要です。特集2は、後者の撤退について、史実をひもときながら、名将の知恵に学びます。神風はそうそう吹いたりしませんから、優れた撤退の意思決定はリーダーの必須能力です。
大小を問わず、強くて寿命の長い組織には名参謀の影が見えるものです。特集3は、明治および昭和史を彩った名参謀たちを六つに類型化しながら、トップとナンバー・ツーの有機的な関係について考察します。兵法の教えどおり、組織戦はナンバー・ツーがカギです。
クラウゼヴィッツの『戦争論』は、政治家や官僚をはじめ、多くの経営者たちの座右の書として愛読されてきました。しかし特集4では、経済学の比較制度派のフレームワークを用いながら、クラウゼヴィッツの直接アプローチ戦略は時代と不適合を起こしており、むしろリデル・ハートの間接アプローチ戦略こそ有効であると主張します。秀逸な論文です。
特集5は、戦史を例に引きながら、ゲーム理論の基礎を解説します。これはわかりやすい。これは、さっそく使えます。『日本史で学ぶゲーム理論』『世界史で学ぶゲーム理論』という本があればよいのに。
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| 2004年5月号 |
特集:競争戦略のキラー・コンセプト |
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| FROM the EDITORS ― この号の読みどころ ― |
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| 戦略を実現させる力 |
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戦略を構想し、立案する力と、これを遂行し、実現させる力――時には修正する力――は、言うまでもなくまったく別物です。前者は概して個人に、後者は明らかに組織に宿るものです。だからこそ、このバランスが難しい。
どちらに軸足を傾けるか、それによって戦略論は二つのパラダイム、すなわち、ポジショニング論とケイパビリティ論に分かれます。いまや、どちらに軍配を上げるべきかを問うことは無益でしょう。戦略の目的は差別化であり(要するにどちらでもかまわないわけです)、また現在のビジネス・リーダーには両方が求められているのですから――。
前号の特集「一流のリーダーシップ、三流のリーダーシップ」が示したように、ここ数年来、リーダーシップが世界的に取り沙汰されています。この現象を考えるに、戦略を実現させる組織能力を発現させることこそ、現在の最優先課題であると――明示的にも暗示的にも――認識されているのではないでしょうか。
本特集は、戦略思考ではなく戦略行動に、また個人能力ではなく組織能力に力点を置いています。
特集1は、ゲイリー・ハメル、久しぶりの寄稿です。会心の一作というにはクエスチョンですが、ストラテジック・インテント、コア・コンピタンスといった彼の文脈からすると、まったく腑に落ちる論考といえましょう。
特集2の筆者の一人、ジョージ・ストーク・ジュニアは、これまで「タイムベース競争」「ケイパビリティ・マネジメント」とユニークなコンセプトを提唱してきた一人です。本稿は、方法論という点で物足りなさを感じえないですが、現在本稿の完成形として書籍を執筆中とか。
特集3は、ビジネス生態系に関する論考です。アイデアそのものはずいぶんと前からいろいろな人たちが提唱していましたが、論文としての体が整っているものを読んだのは初めてです。頭が整理されました。
特集4は、いまさらの感もありますが、「アービトラージ」戦略の重要性を再考します。いままたレトロが流行っていますし、いいかも。
弊社より『クラウゼヴィッツの戦略論』という書籍がありますが、その筆者が特集5の寄稿者です。メタファーについて、その修辞学的な役割とは異なる、認知的な利用法について説きます。少々難解な話もありますが、ナレッジ・マネジメントの歴史を知る人には、それなりに楽しめます。
特集6は、いかに成功パターンを進化させながら、これを隣接領域に展開できるか、そのための組織能力の重要性を解説したものです。グループ経営について考えるうえでも役に立つ。間違いない。
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