幸せな家庭を築くには仕事のノウハウを取り入れよう

家庭よりも職場のほうが、すべてのことがスムーズに運ぶ。そう考える人も多いだろう。職場では、明確な目標を設定し、チームメンバーの個性に配慮しながら、着実に計画を実行する人でも、家庭ではそれをやろうとしないのはなぜだろうか。筆者は、家庭でリラックス時間を確保するために、仕事のノウハウを導入することを提案する。


 つい最近のことである。私は3週間近く出張して、海外数ヵ国および米国内の2~3都市で会議や話し合いをした。その旅と仕事は楽しかったとはいえ、帰路に着いたときは、ほっと胸をなでおろした。さあ、リラックスしよう。

 だが、期待していた安らぎは見つからなかった。出張中は考えないようにしていた仕事はもちろんのこと、家族や友人、教会の集まりのためにやるべき無数の作業や雑用が待っていたからだ。それらすべてに再び向き合うのは楽しかったが、我が家でくつろいだ気分にはなれなかった。むしろ忙しくて、やっかいで、やや無秩序に思えた。

 そのときに感じたフラストレーションを毎週送信しているニュースレターに記したところ、寄せられた反応に驚いた。多くの人が私と同様に、家庭よりも職場でのほうが、すべてのことがスムーズに運ぶと実感しているようなのだ。

 ここで少し、背景を説明しておく必要があるだろう。私は音楽学士号を取得してほどなく、夫と2人でニューヨーク市に引っ越し、以来、一家の主たる稼ぎ手であった。夫は博士課程を修了後、メモリアル・スローン・ケタリング癌センターでポスドク研究員になった。そして、私は図らずもウォール街でキャリアを開始した。

 私たちはやがてボストンに引っ越し、私はそこで金融の仕事を続け、夫はマサチューセッツ大学メディカル・スクールでアカデミックなキャリアを開始した。数年後、彼はいったんコースを外れ、親業に専念することにした。これは、すべての家庭がそうしたくてもその余裕があるとは限らない贅沢だと私は考えている。

 だが、それからの歳月、私は長時間働き、より頻繁に出張するようになった。白状すると、配偶者が家事と子育てのいっさいをうまく切り盛りするという役割分担に、私はすっかり順応した。1950年代の典型的な父親が会社から帰宅するとくつろいでテレビを見ているという図式が、完全に逆転したとまではいかないが、それに近かった。いろいろな意味で、私はややこしいことに巻き込まれる必要がなかった。家族と過ごす時間の大半は、私にとってひたすら楽しい時間だった。

 だが数年前、夫はアカデミックな世界で常勤の仕事に復帰した。近頃、夫はやりがいのある専門職とコミュニティでの仕事の両方を引き受け、しかも、私の出張中は留守番役も務める。大学と家庭という2つの最前線で働いているのだ。それはつまり、気づくにはしばらく時間がかかったが、私もいまや家庭内の戦力として、夫と同じように貢献する必要があるということだ。

 家庭と家族の日常をスムーズに回すには、職場で用いているのと同じ方策の多くを採用する必要がある。プランニングとスケジュール管理、考え抜いたうえでの意思決定、そして人を第一に考えること、などである。

 仕事をしているとき、私は詳細なスケジュールに従う。万事に配慮して、予想外の出来事に対処できるよう、余裕をもって予定を組む。

 これと同じように、家庭生活を営もうと目下試みているところだ。そのうち万事を効率的かつ効果的にこなすことができるようになり、残った時間を自由に使って、家族と一緒に有意義な経験を生み出し、若さを取り戻せるだろう。まだそこまで到達していないが(なにしろ職場では、アシスタントが助けてくれる!)、だからといって試さない理由はない。

 職場で大きな決断をする必要があるとき、私は自分のチームに相談する。最終的な決断は私が下す場合も、まずは全員がいろいろ検討した意見を聞きたいと思う。

 家庭ではこれまで、その場で決断を下すほうが簡単だったので、家族への相談は、したりしなかったりだった。だが、これは変わりつつある。我が家は目下、移行のプロセスにある。そして独断専行という、オフィスでは絶対にしない行為で対処するのを改め、家族全員が意識的に互いの視点を考慮に入れようとしている。

 我が家の「子ども」が18歳と22歳であることも、奏功している。私がすでに職場で発見していたように、貴重な、極めて重大でさえある情報を提供するのは、往々にして最年少層(あるいは子どもたち)なのだ。

 職業人生では、私はチームメンバーの育成にも力を入れている。メンバーが学習曲線のどのあたりにいるか、どのように価値を高めるか、そして取得したスキルを活かして磨くために何ができるかについて、真剣に考えている。当社では最近、社員が各自の長所を特定して才能を生かせるように、長所発見テストである「クリフト・ステレングス・ファインダー」(訳注:ポジティブ心理学の視点から標準的な人格をWebベースで評価するツールで、自分の才能に目覚めることを趣旨としてギャラップが考案)を全社的に実施した。

 もちろん、ほとんどの親は子どもが立派な大人に育っていくのを助けようと、たえず取り組んでいる。だが、その取り組みをよりいっそう計画的にできるはずだ。休暇中に、我が家でもメンバー一人ひとりが前述の長所発見テストを受け、その結果を口頭で発表し、各自の才能をよりよく活用できるよう、互いにどのように助け合えるかを話し合った。

 私が上司兼事業主として実施する最も重要なことは、おそらく、一緒に働いている一人ひとりを世界で最も大切な人として扱おうと努力することだ。私は家庭でも、この理想を掲げたいと思っている。

 職場では、相手がクライアントであれ、当社の社員であれ、話している相手の顔を見もしなかったり、注意を払わなかったりしたことなどけっしてない。だが夫や子どもが話している最中に、私が何の気なしにスマホをチェックしていることは、数え切れないほどある。

 高校3年生の娘から指摘を受けたことをきっかけに、私は文字通り、家族と面と向き合う時間にもっと集中するようにした。こうして話をする時間が増えると、疲れるどころか元気が出て、私にとって最も大切な人たちと気持ちがつながったという思いが強くなる。

 フルタイムで働く親であれば、家のことに充てられる時間は、日にせいぜい2~3時間に凝縮される。その時間内には、リラックスもしたい。だが、リラックスする資格があるようにはなかなか感じられない。ちなみに私は、「資格の有無」を「キャリアの野心をひそかに砕く考え方」と称していて、家庭でも、その資格を誰かに与えられたような気持ちになかなかはなれない。

 家庭と家族の日常をスムーズに進めるには、プランニングと努力が必要だ。リラックスする時間は、みずから獲得しなければならないのである。


HBR.ORG原文:To Have a Happier Home Life, Treat It a Little More Like Work, February 21, 2019.

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ホイットニー・ジョンソン(Whitney Johnson)
エグゼクティブ・コーチ、講演家、イノベーションに関する思想家。「経営思想界のアカデミー賞」とも称される権威と影響力を持つ“Thinkers50”において、「最も影響力のある経営思想家」の一人に最近選ばれた。著書に、ハーバード・ビジネス・プレス刊のBuild an A-Teamと、批評家に絶賛されたDisrupt Yourself(いずれも未訳)がある。Build an A-Teamの第1章は、こちらからダウンロード可能。