現代のマネジャーには6つの自己変革が必要である

マネジメントの役割は100年にわたり不変とされてきた。アンリ・ファヨールが定めた、(1)計画策定、(2)組織化、(3)人材配置、(4)指揮命令、(5)管理統制の5つが重要とされたきたのだ。だが、人工知能等の普及でビジネスの常識そのものが変化するなか、それだけでは時代に取り残されてしまうと筆者らは言う。マネジャーに求められる6つの自己変革が示される。


「まずは、マネジャーを全員解雇せよ」――ゲイリー・ハメルは約7年前、『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌でこう述べた。「チームリーダー、部門長、バイスプレジデントが部下たちの仕事の監督に費やす無数の時間について、考えてみてほしい」

 今日、ほとんどの組織における問題は、単にマネジメントが非効率的だということではない。「マネジャー」の役割と目的が、必要とされているものに追いついていない点であると、筆者らは考えている。

 マネジメントはほぼ100年間にわたり、経営理論家のアンリ・ファヨールが概説した5つの基本的な機能――計画策定、組織化、人材配置、指揮命令、管理統制――と関連づけられてきた。

 これら5つの機能は、マネジャーにとって標準・既定のものとされてきた。だがこれらは、安定した環境において固定的な目標を追う場合のものだ。環境から安定性が失われれば、目標の流動性について考え始める必要が生じる。

 これが今日起きていることであり、マネジャーは慣れ親しんだ5つの機能の枠組みから脱しなければならない。マネジャーは、組織が今日の課題に対応できるよう、次のような転換をする必要がある。

 ●指揮命令から教育へ

 人工知能(AI)によって動かされるロボットが、建築の仕上げや、法務での請求書管理の効率化を助けるようになれば、監督者が部下に命令して、そのような仕事をさせる必要はなくなるはずだ。これはすでに多くの業界で起きている。特に、頭脳よりも肉体作業、創造性よりも反復性の傾向が強い仕事では、人間がロボットに取って替わられつつある。

 AIが自社の業界に及ぼす影響をマネジャーみずから方向づけるためには、将来に関する考え方を変える必要がある。つまり、AIの影響についてもっと時間をかけて探索すること、知識の拡大に努める従業員の取り組みを支援すること、実験を通じて学び、新たな手法・慣行を開発すること、である。

 中国のアリババ・グループの共同創業者であるジャック・マー(馬雲)は最近、次のように述べている。「人間が教えることと、機械が教えることはまったく違うものであるべきです。私たちが教育方法を変えなければ、いまから30年後にはやっかいな事態になるでしょう」

 マーは幅広い意味での教育について言及しているが、彼の主張はまったく正しい。知識ではなく、学習こそが、組織を未来へと動かす原動力になる。そしてマネジャーが、学習の最大の支援者であるべきだ。

 ●制限から拡張へ

 些細なことまで管理するマネジャーがあまりに多い。権限移譲せず、直属の部下に意思決定を任せず、従業員の仕事を不必要なほど監視している。この傾向によって、従業員が思考や意思決定を向上させる能力は制限されてしまう。まさにその能力こそが、組織の競争力を維持するために必要なことなのに。

 今日のマネジャーは、すべての従業員から最高の思考を引き出す必要がある。それは、新旧の競合他社に関する従業員の学びを後押しし、市場の発展のあり方について考えさせるということだ。

 ●排他から包括へ

 自分は誰の助けがなくても、すべての意思決定を下せるほど賢明である、と思い込んでいるマネジャーがあまりに多い。彼らにとって、責任は必ず自分で取るものだ。けれども我々の経験では、最高のマネジャーは新たな状況に直面すると、リーダーシップの輪――つまり組織横断的なリーダーのグループをつくり、問題と解決策についてのより大きな視野を得ようとする。

 マネジャーは、みずからが直面する課題に関して、多様な思考法を取り入れる必要がある。たくさんの従業員が遊び心にあふれた実験を通じて、意見を交換し、経験を組み合わせ、それぞれ異なる将来を思い描くことで、真に斬新な思考が生まれるのだ。

 ●反復からイノベーションへ

 マネジャーは往々にして、予測可能なことを奨励する。つまり、いつもと同じやり方、整ったシステム、既存の成果指標での好成績を望むのだ。そのようにすれば、オペレーションを十分に正当化でき、来る年も来る年も同じように動かせる。

 このやり方で問題となるのは、マネジャーが自分の既知の物事のみ、つまり現状維持に注力し、他の可能性の芽がつぶれてしまうことである。

 組織はマネジャーに、現状を超越したイノベーションについて、もっと考えさせる必要がある。それは難題に直面しているときだけの話ではない。コンサルティング会社アイデア・クチュールのCEOであるイドリス・ムーティの次の言葉ほど、これをうまく表現したものはないだろう。

「会社が拡張しているとき、マネジャーが『我が社の業績は素晴らしい』と言い始めたとき、あるいは事業が全国誌の表紙に取り上げられたとき――そんなときこそ変革について考えるべきなのです。企業が切羽詰まっていて物事が崩壊しつつあるときには、変革の説得材料を見つけるのは難しくありません。企業は、成功に気を取られてイノベーションを忘れてはならないと、学ぶ必要があります。どんなときもイノベーションの好機なのです」

 ●問題解決者から挑戦者へ

 問題を解決することと、事業を成長させることは、けっして同じではない。多くのマネジャーは、自分の最優先の仕事は「火を消すこと」、つまり事業の運営上、自然に生じる問題を片づけることだと我々に語った。だが我々は、今日のマネジャーの仕事がそれだけであってはならないと考える。

 その役割に求められるのはむしろ、より新しく望ましい成長の方法を発見するよう従業員に求め、過去のベストプラクティスを考え直すことを通じて、会社を運営するよりよい方法を見出すことだ。そのためには、より多くの内省が求められる。どの挑戦を追い求め、それらの挑戦について自身がどのように考え対応する傾向にあるかを理解するのだ。

 ●雇用者から起業家へ

 多くの仕事は、上司を喜ばせるためのものに成り下がってしまう。顧客、競合他社、イノベーション、市場傾向、組織の業績などへの注力は、マネジャーが今日してほしい物事および方法へと、たやすく成り変わってしてしまう。おそらく「ボス」の下で働いたことのある人なら誰でも、その感覚がわかるだろう。

 マネジャーの仕事は、雇用者から起業家へと恒久的に変わらなければならない。「起業家的になる」とは1つの思考方式であり、ふだん見過ごしている物事に目をつけ、避けていることを実行するために役立ちうるものだ。

「起業家のように思考する」とは、単に認識を広げ、行動を増やすことを意味する。どちらも、発展のための新たな入口を見出すうえで重要だ。そしてこれにより組織は、より未来志向となるだろう。より活気づき、油断なく目を光らせ、遊び心にあふれ、未来がもたらす絶え間ない新しさに対してオープンになるはずだ。

 我々が望むのは、マネジャーが本当の人間らしさを取り戻すことである。学び、教えることが大好きで、自由とイノベーションをもたらし、想像力豊かに思考する過程で他者を招き入れ、よりよいビジネスとよりよい世界の創出をすべての従業員に求めるリーダーである。それによって組織は、単に古いやり方を新たな技術で更新するだけにとどまらず、まったく新しいことを進める方法を確実に見出すことができるだろう。


HBR.ORG原文:The Role of a Manager Has to Change in 5 Key Ways,  October 26, 2018.

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ジョセフ・ピストルイ(Joseph Pistrui)
スペイン・マドリードにあるIEビジネススクール教授。起業家経営学を担当。グローバルなネクストセンシング・プロジェクトのリーダーも務める。

ディモ・ディモフ(Dimo Dimov)
英国にあるバース大学の起業学・イノベーション学教授。コンサルティング会社キネティック・シンキングの共同創業者。