ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶ
ベスト経営書2015の結果発表

今年も「ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2015」の結果が発表された。2014年10月から2015年9月までに発行された書籍の中から良書の経営書を3冊まで投票してもらった。今年は上位にシリコンバレー発の本が並んだ。

 

 今年も弊誌では、「ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2015」を実施しました。この選書の対象となったのは、2014年10月から2015年9月までに発行された書籍。編集部が読者に「他の人に薦めたい本」「後世に残したいもの」と呼びかけ、3冊まで投票してもらいました。

上位を独占したシリコンバレー発の本

 1位に選ばれたのは、ベン・ホロウィッツ著『HARD THINGS (ハード・シングス)』。2位はエリック・シュミット他著『How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス)』、3位はラズロ・ボック著『ワーク・ルールズ!』となりました。

順位 書名 著者名 出版社
1位  HARD THINGS
(ハード・シングス)
 ベン・ホロウィッツ  日経BP社
2位  How Google Works
(ハウ・グーグル・ワークス)
 エリック・シュミット他  日本経済新聞出版社
3位  ワーク・ルールズ!  ラズロ・ボック  東洋経済新報社
4位  エッセンシャル思考  グレッグ・マキューン  かんき出版
5位  ALLIANCE アライアンス  リード・ホフマン他  ダイヤモンド社
6位  全員経営  野中郁次郎 他  日本経済新聞出版社
7位  ゲーム・チェンジャーの競争戦略  内田和成  日本経済新聞出版社
8位  ピクサー流 創造するちから  エド・キャットムル他  ダイヤモンド社
9位  マーケット感覚を身に
つけよう
 ちきりん  ダイヤモンド社
10位  シンプルに考える  森川 亮  ダイヤモンド社

 

 さらに4位には、グレッグ・マキューン著『エッセンシャル思考』、5位はリード・ホフマン他著『ALLIANCE アライアンス』と、上位5冊がシリコンバレー系の本が並びました。

 1位の『HARD THINGS (ハード・シングス)』はシリコンバレー有数のベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツの共同設立者であるベン・ホロウィッツ氏が、起業家として体験したあらゆる困難を記した自伝的教訓書。本人が冒頭で述べていますが、世に数多ある経営書や自己啓発書に対する「これじゃない」感覚をぶつけた、パンチの効いた1冊です。ありとあらゆる種類の「苦難」に直面した時、何を考え、どう行動したかが赤裸々に語られており、実体験を通じて得られた教訓は、有無を言わせぬ説得力があります。

 読者の感想にも「米国の最新ビジネス分野のダイナミズムが体感できる名著。著者のビジネスパーソンとしての多面性から生まれるビジネスの複雑さ、奥深さ、感情が読み取れることが魅力」(30代女性)、「経営における意思決定で、どんな心構えを持つ必要があるかを示唆し、勇気をもらえる」(30代男性)「平時と戦時のCEOが取るべき戦略・リーダーシップの違いが実体験を踏まえて語られており、非常に役に立った」(50代男性)など圧倒的な支持を得て1位となりました。

 

如実に表れたグーグルへの関心の高さ

 2位の『How Google Works』は、グーグル会長が 戦略、企業文化、人材、意思決定、イノベーション、破壊的な変化への対応などの主要トピックについて同社の歴史とともに語った本です。専門分野の知識を知性やビジネス感覚、クリエイティブな資質と組み合わせられる「スマート・クリエイティブ」と呼ばれる人材をいかに惹きつけるかが、企業の成功を握ると言います。彼らが力を発揮できる環境をどのようにつくろうとしているのかが明かされています。

 読者からも「世界有数の人気企業がどのように構築されたのか、その神髄がわかる1冊。働き方のハウツー本ではなく、世界有数の優良企業と日本企業にどのようなズレが生じているかがわかる内容」(30代男性)、「グーグル流の新たな組織経営や働き方が参考になった」(60代女性)、「人気サービスでも閉鎖するその思考プロセスが一目瞭然の1冊」(30代男性)と、グーグルへの関心の高さが伺えます。

 3位の『ワーク・ルールズ!』は、同じくグーグルの人事担当上級副社長であるボック氏が、15年間で何を学び、自社の社員についてどう考えているかを語り尽くした1冊です。本書で触れる範囲は実に広範囲で、企業文化、人材採用から、人事評価や報酬の決め方まで人事政策に関して、ほぼ網羅しています。グーグルの制度の基礎にあるのは、人に自由を与えればよい仕事をするという信念。その思想はシンプルで美しく、人事について新たな視座を与えてくれます。

 読者も「自分より優秀な人を採用する、という一言に尽きる本だが、そのためにどのように人を集めるかや労力を惜しまない姿勢が参考となる」(30代男性)、「過去に日本企業が実施してきた人事の常識、ルールを覆す内容だが、説得力と実践力が伴っており感服」(50代男性)と、同社の成功のカギが人事組織にあるのではないかと考えたようです。

2015年のトピックが表れた本がランクイン

 シリコンバレー系の本以外の本に目を向けると、2015年の経営課題が浮き彫りになります。6位の『全員経営』は、知識経営の重要性がいまなお認識されていることを物語っています。

順位 書名 著者名 出版社
11位  経営の失敗学
 変われないのか
 菅野 寛  日本経済新聞出版社
12位  人工知能は人間を超えるか  松尾 豊  KADOKAWA
13位  21世紀のビジネスに
 デザイン思考が必要な理由
 佐宗邦威  クロスメディア
 ・パブリッシング
14位  0ベース思考  スティーヴン・レヴィット他  ダイヤモンド社
15位  オープン・イノベーション
 の教科書
 星野達也  ダイヤモンド社
16位  競争しない競争戦略  山田英夫  日本経済新聞出版社
17位  問いかける技術  エドガー・H・シャイン  英治出版
18位  合理的なのに愚かな戦略  ルディー和子  日本実業出版社
19位  ハーバード流「気づく」技術  マックス・H・ベイザーマン  KADOKAWA/角川マガジンズ
20位  21世紀の資本  トマ・ピケティ  みすず書房

 

 また人工知能(12位『人工知能は人間を超えるか』)、デザイン思考(『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』)、オープン・イノベーション(15位『オープン・イノベーションの教科書』)といった、いままさに取り組むべき課題が一覧になったかのようなランキングとなりました。

 なお年初に話題になったトマ・ピケティの『21世紀の資本』は、DHBR読者の中で経営書に入れるかどうか判断が分かれた結果の順位かと思われます。投票の呼びかけに際し、編集部では「経営書」の定義はしておらず、読者が経営に役立つものという基準で選んでいただきました。ビジネス書、自己啓発書など、さまざまな呼び方もありますが、DHBRの読者が考える「経営書」の定義がこのランキングであるという見方ができそうです。

 本企画は年末に発表というスケジュールの都合上、2015年9月末までに刊行された書籍を対象にしています。今年の10月以降も『限界費用ゼロ社会』『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』など興味深い書籍が発売されていおり、いまから来年のランキングが楽しみです。なおランキングの詳細は12月10日発売の『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』(2016年1月号)で紹介されているほか、全国の書店でフェアが開催されます。