従業員エンゲージメントを高める3つの方法

人が「あともうちょっと頑張ろう」と思うのは、オーナーシップを持っている時だけだ。その意味で従業員エンゲージメントは、労働生産性の観点からも非常に重要である。その際の試みとして見落としがちな3つのポイントをベイン・アンド・カンパニーが提示する。連載「ホワイトカラーの生産性を高める」第6回(毎週金曜、全8回を予定)。

 

 借りたレンタカーを洗う客はいない。人が「あともうちょっと頑張ろう」と思うのは、オーナーシップを持っている時だけだ。職場でも同じことが言える。自分が重要な仕事を担っていると感じ、オーナーシップを持っている人の方が、より仕事に関心を高く持って取り組んでいるものである。

 優秀な人材を適切なチームに組成することはできる。組織内の壁をなくし、効果的に協働し、チームメンバーがそれぞれの仕事を着実に完了させられるように、会議やその他のコミュニケーションを設計することもできる。だが、チームメンバーがオーナーシップを持たず、関心度合いが高くなければ、有意な差を生むことは難しい。反対に、チームメンバーのエンゲージメントを高めることができれば、目に見えて労働生産性を押し上げることができるはずだ。

 従業員エンゲージメントとはどのくらい強力なものなのか。腎臓病患者に対する透析治療の最大手ダヴィータの例を取り上げてみよう。15年前のダヴィータ(当時のトータル・リーナル・ケア)は業績が悪く、資金ショート寸前で、経営陣の約半分が解雇や転職で会社を去るような状況だった。そこで全く新しい会社に生まれ変わるべく、新CEOとしてケント・ティリが指名された。

 彼はダヴィータを1つの村、彼自身をその村長に例えて話し始めた。全従業員に組織文化の変革に参画するよう促したのだ。そして毎年必ず、患者のために「もうひと頑張り」をした従業員数百人を選出して表彰した。また、あるジャーナリストによると、「毎年開催される社員総会では何千人もの従業員が一堂に会し、表彰のお祝いから、亡くなった患者さんへの追悼まで、仕事の中で生まれる感情を共有してきた」という。また彼がこの総会で参加者に問いかける定番の質問が3つあり、その1つが「ダヴィータは誰の会社か?」というものだ。参加者は口をそろえて「私たちの会社だ!」と答えるそうだ。

 このような従業員エンゲージメントを高める活動を続けてきた15年間のダヴィータの成長は、目を見張るものがある。売上は14億ドルから118億ドルまで拡大、利益も3000万ドルの赤字から6.6億ドルにまで成長した。患者の治療実績も改善、従業員離職率も低下、さらにダヴィータはフォーチュン誌が毎年発表する「最も素晴らしい会社」にも選出された。

 ダヴィータと同じ道を歩むかどうかは別として、基本的にはどんな会社でも従業員からエンゲージメントを引き出すことは可能である。ここでは、多くの会社が見落としがちな点をいくつか紹介する。

●財務的成果ではなく、自社が社会に与える影響について語ろう
 株主は財務的成果を最重視するかもしれないが、従業員は自社が社会に与えうる影響力にモチベーションを感じるものだ。X世代やミレニアル世代と呼ばれるような今後労働人口の中心となる若い世代で、この傾向は顕著である。デルの創業者であるマイケル・デルは、社内会議で、自社の情報技術の発達のおかげでどれだけの患者がより良い医療を受けられたか、どれだけの子どもたちがより良い教育にアクセスできるようになったかについて言及した。その一方で、自社の利益については一言も口にしなかったという。

●タスク管理だけではなく、周囲の心を奮い立たせるリーダーを賞賛しよう
 研究によると、周囲の人の心を奮い立たせるようなリーダーと働く人は、組織に対するコミットメントや満足度が高く、生産性も高い。また、離職率も低いようだ。端的に言うと、従業員エンゲージメントと周囲の心を奮い立たせるリーダーの能力は直接的な関係にあり、決してリーダーの仕事の振り方や業務管理の得手不得手とは関係ないといえる。人を鼓舞できるかが重要なのだ。真面目にこつこつと仕事するのと同様、人のやる気を引き出した経営陣も評価すべきである。

●従業員の満足ではなく、従業員からの推奨を引き出そう
「満足している」と言う従業員が主体的に仕事に取り組むとは限らない。満足している従業員は毎日会社に来て決められた時間働き、仕事を楽しんでいるかもしれない。だからといって、必ずしも喜んで「もうひと頑張り」するとは限らない。従業員エンゲージメントを測るうえで圧倒的に優れた指標は「従業員が自社をどの程度、彼らの家族や友達に推奨するか」である。これは、有名なネット・プロモータ・スコア(NPS)の関連指標である「従業員NPS(eNPS)」として知られている。NPSが顧客から直接、定期的にフィードバックを集めるのと同じく、eNPSは従業員から定期的にフィードバックを集め、管理職が従業員エンゲージメントや推奨度を高める行動を取るようにするものだ。ベインの調査によると、従業員推奨度と顧客推奨度は比例関係にあるため、結果として、これが顧客ロイヤルティにも貢献することになる。

 経営陣は、この話題を「ソフト」なものとして捉えがちだが、これは計測可能でかつ経営に重大な影響を与えるものである。そして、それは労働生産性を高める試みと連動するものだということに留意する必要があるだろう。


HBR.org原文:Three Ways to Actually Engage Employees June 16, 2014

*次回は2月20日(金)公開予定。

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ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)
1973年に創設。世界33ヶ国に51拠点のネットワーク、約5700名を擁する世界有数の戦略コンサルティングファーム。クライアントとの共同プロジェクトを通じた結果主義へのこだわりをコンサルティングの信条としており、結果主義の実現のために、高度なプロフェッショナリズムを追求するのみならず、きわめて緊密なグローバル・チームワーク・カルチャーを特徴としている。