グーグル、ゴールドマン・サックス・・・
なぜ企業はマインドフルネスに取り組むのか

グーグルは2007年、瞑想とマインドフルネスを教える社内研修を開講し、いまでは最長6カ月待ちの人気講座であるという。ほかにもゴールドマン・サックスやP&Gなど、マインドフルネスに組織的に取り組む優良企業の例は数多い。こうした動きの背景には、瞑想や内省がもたらす数々の無視できない効果がある。


 2014年2月、タイム誌の表紙に「マインドフル革命(The Mindful Revolution)」の文字が躍った。これはビジネス界での最新の流行を誇大に伝えているようにも見えるが、企業幹部たちの考え方に大きな変化が起きていることの表れにも思える。私自身は後者だと考えている。

 瞑想や内省、日誌の執筆といったマインドフルネスの取り組みは、グーグル、ゼネラル・ミルズ、ゴールドマン・サックス、アップル、メドトロニック、エトナなどの優良企業で実践され、組織の成功に寄与している。いくつか例を挙げよう。

●グーグルで「陽気な善人」の肩書きを持つチャディー・メン・タンは、CEOラリー・ペイジの後押しを得て社内で瞑想の講座を数百回にわたり指導し、著書『サーチ! 富と幸福を高める自己探索メソッド』はベストセラーとなった。

●ゼネラル・ミルズはCEOケン・パウエルの指揮の下、瞑想を組織の正式な慣行としている。社内で瞑想の講座を指導していた元幹部ジャニス・マートラーノは、退社後にインスティテュート・フォー・マインドフル・リーダーシップを設立し、マインドフルネスになるための瞑想を教える企業幹部向けの講座を運営している。

●ゴールドマン・サックスは、フォーチュン誌の「最も働きがいのある企業」で2014年に45位に入った(前年の93位から躍進)。同社によるマインドフルネスの講座と取り組みが、フォーチュン誌の特集で取り上げられた。

●瞑想の実践者でもあったアップル創設者のスティーブ・ジョブズは、負のエネルギーを抑制するため、および画期的な製品を生み出すことに集中するため、そして卓越性の実現をチームに要求する際に、マインドフルネスを利用していた。

●メドトロニックは創設者アール・バッケンの先見の明により、1974年にはすでに瞑想のための部屋を設けていた。この部屋はやがて、創造性を重んじる同社の姿勢を象徴する存在となった。

●医療保険会社エトナはCEOマーク・ベルトリーニの指揮の下、瞑想とヨガの効果に関する綿密な調査を実施し、従業員の健康管理コストの抑制につながることを報告している(英語サイト)。

 激しい競争に身を置くこれらの企業は、経営トップ以下すべての従業員が途方もないプレッシャーに直面しており、困難な課題を克服するには、最も重要なことについて熟考する時間が足りないとわかっている。数限りない要求や気を散らす物事を整理する方法を、誰もが必要としている。しかし重責を担うリーダーにとっては、次のことが特に重要となる。重大な意思決定に際し集中力を発揮して思考を明瞭にすること。組織を変革するにあたり創造性を発揮すること。顧客と従業員に思いやりを持つこと。そして自分らしさを貫く勇気を持つこと。

 集中力、明瞭な思考、創造性、思いやり、勇気。これらこそ、私がともに仕事をし、教え、メンタリングを施し、インタビューした「マインドフルなリーダー」たちが持つ資質である。これらはまた今日の卓越したリーダーたちに、多くの困難に立ち向かう再起力と、長期的な成功を目指す決意を与える。本当に違いをもたらすのは――これは単純なようで多くの企業幹部が気づいていないことだが――思考を明瞭にする能力、そして最も重要なチャンスに集中する能力なのだ。

 心理学者のダニエル・ゴールマン博士はEQ(心の知能指数)の提唱者である。彼は新著Focusで、脳の認知力を制御することが思いやりや勇気といった心の資質を高めること、そのためにマインドフルネスが重要であることを、データで示している。また、リーダーが自身や組織の関心を明確に方向づけるためのフレームワークを示している。すなわち、①自分への集中、②他者への集中、③外界への集中、という3種類の集中力をこの順番で使いこなすという方法だ(詳細は本誌2014年5月号「リーダーは集中力を操る」を参照)。こうした集中力を養うには、1日のなかで生じる不安や混乱、プレッシャーを取り除き完全に脳をリラックスさせるための、習慣的な取り組みが必要となる。

 私は1975年、妻のペニーとともにトランセンデンタル・メディテーションのワークショップに参加した。以降、瞑想の習慣を38年間続けている。いまでもノートパソコンを飛行機に忘れてくるなどのうっかりミスがあるものの、目の前の瞬間に集中する努力はずっと続けている。私の家族も全員が瞑想を日々行っている。息子のジェフはみずからの努力で経営幹部となったが、毎日の瞑想とジョギングがなければ、ストレスに満ちたこの仕事で成功できなかっただろうと言う。

 マインドフルなリーダーになる方法は瞑想だけではない。ハーバード・ビジネススクールで私が教えるクラスに参加する企業幹部たちは、意識を落ち着かせ思考を明瞭にするためのさまざまな方法を教えてくれる。彼らによれば、リーダーシップを最も阻害するのは知能指数の欠如や職務の厳しさではなく、集中力と健康を維持することの難しさであるという。そして幹部としての厳しい生活に備え、頭と体、精神を定期的に回復させるための日課に取り組んでいる。たとえば祈祷、日誌の執筆、ジョギングやエクササイズ、長距離のウォーキング、配偶者やメンターとの深い対話などだ。

 重要なのは、内省を習慣的に行うことだ。毎日の決まった流れから自分を引き離して、仕事と人生についてじっくり考え、自分にとって本当に大事なことを見極める――その機会を持つ必要があるのだ。それは成功にも、幸福と長期的な充実感にもつながるだろう。


HBR.ORG原文:Developing Mindful Leaders for the C-Suite March 10, 2014

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ウィリアム・W・ジョージ(William W. George)
ハーバード・ビジネススクール教授。経営管理論を担当。メドトロニックの元会長兼CEO。著書に『リーダーへの旅路』(ピーター・シムズとの共著)がある。