組織の「存在意義」をデザインする

パーパス・ブランディングを実践するために

かつては、自社でヒト・モノ・カネ・データ・チエというあらゆるリソースを囲い込むことで競争優位を築き、オペレーションを徹底的に効率化することが、企業の価値創造を実現した。しかし、消費者のニーズが目まぐるしく変化する時代に勝利を収めるには、囲い込みの戦略では限界がある。組織の内と外を隔てる障壁をできるだけ下げて、外部から経営資源を呼び込むことが価値創造につながるのだ。では、組織外のリソースをどうすれば引き付けることができるのか。組織の「存在意義」に賛同・共感・自分ごと化してもらうことがカギを握る、と佐宗邦威氏は言う。本稿では、組織のあるべき姿を語る際のキーワードである「ミッション」「ビジョン」「バリュー」、そして「パーパス」の定義とその役割を明確にしたうえで、「生きた存在意義」を設計し、浸透させるパーパス・ブランディングの方法論が示される。
『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年3月号より、1週間の期間限定で抜粋版をお届けする。

「パーパス」が問われる時代

「企業のパーパスは、20世紀型のような規模の経済による効率性の追求ではない。より早く、より規模の大きい学びを得るために、いまの時代の大企業が組織の外の世界に学びを求めるのは自明のことである」

 これは、筆者がシンギュラリティ大学[注1]のエグゼクティブプログラムに参加した際、デロイトのセンター・フォー・ジ・エッジに所属するジョン・ヘーゲル三世が伝えたメッセージである。自分がさまざまな企業経営やイノベーションの現場で未来創造をしてきた経験から、最も腹落ちした言葉だ。

 ヘーゲル三世は、20世紀型組織は製品・サービスの生産効率を重視するが、21世紀型組織はデジタルインフラ上でビジネスを展開するので、知識創造の量と質、スピードが価値になると言う。より多くのチエを生むために外に開き、外部からヒト、モノ、カネ、データというリソースを引き付ける環境そのものが価値創造に直結するのである。

 21世紀型組織の代表としては、国外ではGAFAやテスラ、国内では日本発で世界に通用するスタートアップのメルカリなどが挙げられるだろう。彼らは実際、徹底的な効率化によって達成される目標ではなく、生涯を費やしても実現不可能と思われる壮大な理想を掲げている。そして、それを外の世界に向けて積極的に発信することで、価値を創造するための環境をつくり出している。

 たとえば、テスラはEV(電気自動車)の雄であるが、同社は自分たちのミッションを「持続可能なエネルギーへのシフトを世界中で加速させる[注2]」と定義し、EV事業はあくまで持続可能なエネルギーシステムをつくりあげるための手段だと位置付けている。メルカリの場合、自社のミッションを「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」と定義している。世界のC2Cマーケットプレイスでインフラになることを志し、大義を実現する過程では一時的に赤字を計上することへの理解を株主に求めながら、国内外で急速な事業拡大を進めている。

 こうしたアプローチは「ムーンショット」(moonshot)と呼ばれる。ムーンショットは、米国が「1960年代の間に月に到達する」という実現不可能に思える野心的な目標にコミットをすると宣言し、そのために、あらゆるリソースを集積・統合したことに由来する。理想から逆算して現実との間に大きなギャップをつくり出し、その乖離を埋めるクリエイティブテンション(創造的緊張)を生む戦略である。

 シンギュラリティ大学では、ムーンショットと同様の意味合いで「MTP」(Massive Transformative Purpose:野心的な変革目標)という表現を用いている。また『ティール組織』の著者フレデリック・ラルーは、組織が目指す方向に向かって自律的に進化し続けるために「エボリューショナリー・パーパス」(evolutionary purpose:存在目的)を定めることが重要だと説いている。

 いずれも「パーパス」(purpose)が登場するように、これからの組織のあるべき姿を考える際、この単語が用いられることが増えてきた。「パーパス」とは何か。従来からいわれている「ミッション」(mission)、「ビジョン」(vision)、「バリュー」(value)とは、何が違うのだろうか。

 本稿では、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の違いを明確にする過程を通じて、「パーパス」がどのような役割を果たすかを検討する。そのうえで組織が具体的にどうすればよいのかについて、筆者なりの方法論を示したい。

21世紀型組織には
「求心力」が不可欠である

 さて、ミッション、ビジョン、バリューの違いを考察する前に、GAFAやテスラ、メルカリのような企業が、なぜ壮大な理想を掲げ、それを発信するのかをあらためて検討したい。筆者は、そこには時代の変化に伴う、重大な意味があると考えている。

 コンサルタントであり、『Whyから始めよ!』で有名なサイモン・シネックの「ゴールデンサークル理論」によると、組織の資源は、(1)WHY、(2)WHAT、(3)HOW、という3つに分けられるという。WHYを簡潔に説明すると、経営理念などを通じて表現される組織の存在意義である。WHATは、組織の価値創造を規定する戦略やコンセプトである。HOWは、ファイナンス、マーケティング、デザインなど、組織の価値創造を実現する手段であると整理できる(図表1「組織のゴールデンサークル」を参照)。

 弊社が支援を続けているムーンショット型企業の代表格であり、日本最大の料理レシピサービスで有名なクックパッドを例に整理しよう。クックパッドは「毎日の料理を楽しみにする」というWHYの下、世界中のレシピを記録し、共有する場となるレシピサイトのプラットフォームの構築というWHATがあり、そのためにレシピコンテストやタイアップ広告、料理データを用いたマーケティング支援などのHOWを遂行するのが主な事業だ。

 WHYやHOWは大脳辺縁系という直感に訴えかけるレイヤーであり、WHATは大脳新皮質という理性に訴えかけるレイヤーである。シネックは、現代はこれまで以上に社内外で共感を生むことが求められており、理性的・論理的なWHATよりも、WHYや、その具体表現としてのHOWが重視され、経営者はそれを語るべきだと提唱した。

 シネックによる問題提起は、冒頭に示したヘーゲル三世の発言に通じるところがある。筆者自身、企業のイノベーションを現場で支援する中で、WHYを語ることでチーム力や組織力が高まり、価値創造のスピードが上がることを実感しているため、両氏の主張に大いに共感する点がある。そこで以降、ゴールデンサークル理論による資源の分類を参照しながら、20世紀型組織と21世紀型組織の違いについて、より詳細に論じたい。

 20世紀型の組織は、一言で言うと「囲い込み」を価値創造の拠り所にしている。かつての自動車産業や製造業に象徴されるように、組織の内と外の間に高い障壁を設け、自社内で生産設備や知的財産などを独占したうえで、選択と集中を通じて自社の強みを発揮できる陣地を増やし、スケールメリットによりオペレーション効率を高めていくような、競争優位性と効率性を重視する経営モデルが前提とされていた。この時のリソースは有限であるため、一定量を超えると価値が逓減していくロジスティックカーブをたどる。

 このモデルでは、自社がどこで戦うべきかを特定し、その領域での学習速度を速め、有限なリソースを囲い込むことが重要となるので、WHATとHOWが重視される。一方、WHYは所与のものとして扱われ、日常のオペレーションの過程ではほとんど意識されないケースが多い。

 これに対して21世紀型の組織は、「呼び込み」を拠り所にする。グーグルやフェイスブックのような、インターネット上のプラットフォーマーが代表的な存在である。世の中のニーズに即座に適応して新しい製品やサービスを生み出し続けるために、組織の内と外を隔てる障壁は低い。自社のアルゴリズムをAPIとして公開したり、知財をオープンにしたりすることで自分たちが知識創造のプラットフォームとなり、多種多様なヒト、モノ、カネ、データを呼び込み、チエを生む。すなわち、組織外への求心力を基点とした持続的な知識創造が価値創造のカギを握る。これは情報革命が実現可能にしたモデルである。

 デジタルエコノミーにおける知識創造とは、無形資産の創造である。有限なリソースを価値創造の源泉とする20世紀型組織とは異なり、サーバー資源とコンピュテーションのスピードが向上する限りリソースは無限に広がる。したがってユーザー数とその利活用データが蓄積し、それがある一点を超えた瞬間、エクスポネンシャル(等比級数的)な成長とも呼ばれる、ネットワーク外部性による爆発的な価値を生み出すという現象が見られる。

 ただし、アマゾン・ドットコムが創業から黒字化まで10年近くを要したように、その一点に至るまでの段階、特にデータを蓄積する初期のフェーズでは収益をほとんど生まず、ある領域で独占状態になって初めて収穫逓増の状況が訪れる。すなわち、長期的な視野でハイリスク・ハイリターンを目指すのが21世紀型組織の典型的な経営モデルである。

 ただ、人間の認知的特徴に目を向けた時、連続的な変化に基づく直線的な未来を想像することは比較的容易であるが、非線形で描かれる未来を直感的に理解することは難しい。そのため21世紀型組織の経営者が目指している理想の世界と、目の前に提示される現実との間に、特に初期の段階では必ず大きなギャップが生じる。いっこうに黒字化が見えない状況を突き進むことで、従業員を失望させる危険性があるだろう。また投資家をその船に乗せるために理解を得るのは、短期でわかりやすい成果が期待できる20世紀型のビジネスに比べると困難である。

 21世紀型組織が、目に見える成果が出ない段階においても、長期的で大きな成功を拠り所に自分たちとともに挑戦してくれる従業員や投資家を集めるには、ストックオプションで報いるようなインセンティブの設計だけでなく、自分たちのWHY、すなわち存在意義をより強く訴えかけて外部のリソースに対する求心力を高めることが不可欠である。WHYを不動点として設定したうえで、より野心的で実験的なプロジェクトなどHOWの実装を通じて、存在意義を社内外に発信することの必要性が高まっているのだ。

 以上のように、20世紀型組織はWHAT→HOW→WHYの順で価値を創造したのに対して、21世紀型組織はWHY→HOW→WHATと反対の順で価値創造を行っている。これまでは日が当たらなかったWHYこそが、価値の源泉となる。自社の事業プランの収益性を語ることで理性に訴えかける以前に、人類の進歩に対して果たすべき意義を語ることでまずは直感に訴えかけ、人に行動を起こさせる動機付けを与えることの重要性が増したのである。

 自分たちのビジネスは20世紀型であるから変わる必要はない。そう考える方もいるかもしれない。これら2つのモデルが従来、基本的には異なる経済モデルの下で成り立っていたことは事実だ。しかし、インターネットの普及に始まり、IoT(モノのインターネット)のようなテクノロジーの台頭によって20世紀型組織がデジタルエコノミーと融合したことで、双方のモデルは急速に接近し、時に融合や並存を迫られている。その結果、あらゆる企業が自社のバリューチェーンの中で21世紀型の経営モデルと接することとなり、WHYを発信することはすべての企業に求められているといえるだろう。

 ここで冒頭の議題に戻りたい。ミッション、ビジョン、バリュー、さらにパーパスは、WHY、HOW、WHATといかなる関係性を持つのだろうか。

 結論を先に述べると、21世紀型組織は、その存在意義のコアであるミッションをWHYとして定義し、それをビジョンという形でわかりやすい表現に落とし込んで発信することで、組織の求心力を高める。そのうえで独自の組織文化を培うバリューをHOWとして活用し、組織内外のプレーヤーとの共創力も高める。戦略であるWHATは、そのプロセスの中で創発され、結果として生まれてくるものだ(戦略論の大家ヘンリー・ミンツバーグ教授が提唱する、創発的戦略論をもとにした価値創造の考え方と通じる)。

 以降、ミッション、ビジョン、バリューという概念の原義を押さえたうえで、21世型組織でそれぞれが果たす役割を再定義しよう。

 WHYの発信が重要性を増す2つの潮流
 経営環境の変化に加えて、WHYを発信することの重要性を後押しする、2つの潮流がある。1つは、ミレニアル世代の台頭、もう1つが、機関投資家の意識の変化である。
 ミレニアル世代は生まれた時からインターネットと接しており、GAFAのように社会変革を実現してきた21世紀型組織こそ身近な存在である。彼らは金銭的なインセンティブ以上に、その組織で何を達成できるかを重視する。そのため組織の仕組みで縛り付けるのではなく、存在意義に共鳴してもらうことで呼び込む考え方が主軸になる。2025年にはミレニアル世代が世界の労働人口の75%を占めるといわれており、人材として、消費者として支援してもらうためにも、自分たちのWHYを訴えかけることが欠かせない。
 また、金融市場の動向に目を向けると、2016年の調査で、環境(environment)、社会(social)、企業統治(governance)を重視するESG投資の割合が全体の25%を超えたという。国連が掲げた2030年までに達成すべき「持続可能な開発目標」(SDGs)も注目を浴びている。それらの実現を目指す企業は結果的に、長期投資を重視する機関投資家から投資を受けやすい環境が整ってきた。株主利益の最大化という単一指標で計られていた投資の基準が、その企業がいかなる社会的意義を果たすのかへとシフトしつつある。


ミッション、ビジョン、バリュー、それぞれの違い

 組織とは、人の集団が群れとして、ある目的を達成するために存在するものである。創業者の情熱から始まり、人を動かす仕組みをつくる中で価値が再生産され、徐々に社会的に必要とされる存在へと成長していく。あらゆる経営者にとって、「自分」というリソースの限界を超えることは不可欠なプロセスである。

 組織が創業者を超えた生命体になるためには、集団の向かう方向性や文化を育むDNAが必要である。それが無限に複製された際に、大きな価値が生まれるようなDNAをデザインしなければならない。その時に大きな役割を果たすのがミッション、ビジョン、バリューである(図表2「ミッション、ビジョン、バリューとは何か」を参照)。

 ミッションとは「組織の存在意義を定める」ものである。類似概念として経営理念や経営哲学、綱領、社是などがあるが、いずれも求心力を高めることを目的とする。組織が創業者を超えた存在へと成長を遂げる中で、その正統性を担保するための不動点として、言わば憲法のような役割を果たす。

 ビジョンは、「組織が目指す理想の状態」を定めるものだ。その目的は人を動かすことだが、時代が変化するにつれて、その役割が変わったと筆者は考えている。

 20世紀型の経営環境では、ビジョンは中期経営計画などに落とし込まれた。ある時点までに組織が達成すべき不動の目標をイメージしやすい形で共有し、それを達成するインセンティブ(外的動機)を高めるために活用されており、非常に重要な経営資源だった。

 だが21世紀型の経営環境においては、その急激な変化によって未来に不動点を定めることが困難になった。そのため、組織が目指す理想の状態は頻繁に変わることを前提としたうえで、ミッションを実現した時の社会像をより野心的に提起するものへと変化している。ビジョンの発信を通して組織の枠を超えて人を動かすことに重点が置かれるので、従来のように組織内の目標を数値や文章で表現するに留まらず、ビジュアルなどを通してビジョンを表現する企業もある。

 バリューは「組織の構成員が共有する価値観」を定めるものであり、社内外に染み出していく組織文化をつくることが目的である。バリューの役割も時代に応じて変わってきた。

「囲い込み」を拠り所にした20世紀型組織では、従業員にその会社の色に染まってもらうために教育制度や就業規則、人事評価制度など、組織内のルールを可視化する際の根拠として活用されていた。一方、「呼び込み」を拠り所とする21世紀型組織では、バリューを起点にユニークな組織文化をつくり、それを外部と共有することで、価値観が一致する人材を採用したり、外部パートナーや顧客を巻き込んだりできる。すなわち、価値共創のインフラである。その価値観が自社のサービスにも醸し出され、それが外部に伝播すると理想である。

 ミッション、バリュー、ビジョンは、どのような関係性にあるのか。ここまでの議論をまとめよう(図表3「20世紀型組織と21世紀型組織の比較」を参照)。

 ミッションとは、現状の自分たちの状態(AS IS)と、将来の理想の状態(TO BE)のギャップをつなげるベクトルである。どの点からどの点に向けて、どちらの方向に進んでいくのが正しいのかを指し示すことで、組織に求心力を生み出す。

 バリューは、現状の自分たちの状態(AS IS)を共有する価値観であり、それを共有する人たちと、そうではない人たちとの間に境界線を設ける。その価値観を日々の行動に落とすものが、クレドなどの行動規範である。それが実際の行動となることで組織文化となり、組織の一体感を高める。

 バリューに対してビジョンは、理想の状態(TO BE)を実現した将来を具体的にイメージさせる表現である。理想に至る過程を示す中期ビジョンのようなものから、ミッションが実現した究極的な状態を表現するものまで、時間軸に応じて複数のビジョンが存在しうる。

パーパスとは何か

 では、その中でパーパスはどのような役割を果たすのだろうか。筆者は、パーパスはミッションの一つの種類として解釈できると考えている。

 英語の“purpose”の語源は「前に」(pur)、「置く」(pose)こと、すなわち前進する先の目的を定義するものである。それに対して“mission”は、ラテン語の「送る」を語源とし、宗教の伝道を意味するといわれる。

 ミッションとは理想と現状のギャップをつなげるベクトルだとすると、そのベクトルは2つある。「自分たちは社会に何を働きかけたいのか」と外側にある終点に重心が置かれたものと、「自分たちは社会の中でどうありたいのか」と内側に重心が置かれたものだ。前者がパーパスであり、後者がアイデンティティ(identity)である。

 このように整理すると、ミッションの中には「パーパス型ミッション」と「アイデンティティ型ミッション」があるといえる。より単純化すれば、「我々は~を欲す」と社会変革を志すミッションはパーパス型、伝統産業のように「我々は~であり続けるべし」と社会の中で文化の創造や保全を目指すミッションはアイデンティティ型である。パーパス型ミッションは組織が取る行動に主眼が置かれているので「DO」のミッション、アイデンティティ型ミッションは組織の状態そのものに主眼が置かれているので「BE」のミッションと言い換えることもできる。

 たとえば、パナソニックやオムロンはアイデンティティ型のミッションを定義している。パナソニックのミッションは「産業人たるの本分に徹し 社会生活の改善と向上を図り 世界文化の進展に寄与せんことを期す」、オムロンのミッションは「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」と書かれており、いずれも自分たちの状態を定義したミッションである。一方、テスラの「持続可能なエネルギーへのシフトを世界中で加速させる」や、メルカリの「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」は、行動が定義されているのでパーパス型ミッションだ。

 アイデンティティ型ミッションは前述の通り、伝統的大企業や老舗企業のように、社会における文化の創造や保全を担う組織に適したフォーマットである。自組織が守るべき文化が明確化されるので、構成員がそこに所属すること自体を誇りに感じられるようになるからだ。一方、パーパス型ミッションは具体的に示す行動がわかりやすいので、組織外にいる人たちを巻き込みやすい。そのため、スタートアップのように社会変革を志し、求心力を必要とする企業に適した形である。

 ただし繰り返しになるが、いまやあらゆる組織が21世紀型の経営モデルと切り離せないので、組織外の人材を引き付ける求心力の発揮が不可欠だ。パーパスはそれを生み出す起点であり、組織の新しい群れ方を提示する概念である。すべての産業が変革期を迎えたいま、既存のミッションをパーパス型ミッションに翻訳して発信することで、集団としての求心力を高める必要がある組織は多いのではないか。

 20世紀型組織では、組織の構成員や関係者が、創業者が描いた世界観に同化し、そのシンボルの一部として機能してきた。同化を目的とするのであれば、経営理念を記したマニュアルを配布したり、研修を実施したりすることは効果を発揮する。ある程度、「法律としての存在意義」が価値を持つ時代であったともいえる。

 一方、21世紀型組織はネットワーク化された環境下で成り立っているので、構成員や関係者は、その組織にすべてを捧げるという感覚を持っていない。そのため組織の存在意義を自分ごと化させ、そこに自分なりのストーリーを生み出し、それを社会に対するアクションへと変えられるような、コミュニケーションの媒介としての「生きた存在意義」を設計し、浸透させる必要がある。

【注】
(1)シンギュラリティ大学は、シンギュラリティの概念を提唱した科学者のレイ・カーツワイルと、Xプライズ財団CEOのピーター・ディアマンディスが発起人となって創設した、教育インキュベーション機関である。技術進化のスピードが上がり、ビジネスインフラのデジタル化が進む環境の中で、人類はどのように思考のOSをアップデートしていくべきかという課題意識の下、エクスポネンシャル(exponential:等比級数的)という概念に基づき、10億人規模の課題をテクノロジーの横断型な組み合わせにより解決することを実現すべく、実践を通じてその方法論を提示している。
(2)Tesla’s mission is to accelerate the world’s transition to sustainable energy.

パーパス型ミッションという「生きた存在意義」を世の中に伝播させる方法論として、「パーパス・ブランティング」注目を浴びています。パーパス・ブランディングをどう実践すればよいのか。その具体論までが語られる本稿全文は『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年3月号に掲載されています。

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◇組織の「存在意義」をデザインする(佐宗邦威)
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