EI(感情的知性)を磨いて変革への適応力を養う

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 ●抵抗の源を特定する

 抵抗の背景にある理由を理解するには、高いレベルの自己認識が必要だ。

 たとえば、変革によって自分が無能に見えることを懸念するがゆえに抵抗を覚えているのなら、成功を収めるために必要な新しいスキルの学習プランを立てるといい。あるいは、変革によって自律性が妨げられるのではないかと憂慮している場合は、どうすれば自分もそのプロセスに関与できるか、変革を率いるリーダーたちに尋ねるといい。

 たとえ組織が向かっている方向が気に入らない場合でも、実施に関与することで、コントロール感を取り戻し、抵抗したい衝動を抑えるのに役立つ可能性がある。

 ●感情的な反応の根拠を自問する

 変革に対する感情的な反応は、独りよがりの解釈、つまり自分が正しいと自身に言い聞かせている「ストーリー」を反映することがよくある。実際には、こうしたストーリーは意識下のものであることが多く、現実に合致していることはめったにない。

 次のように自問しよう。「今回の変革と関連して、私が最初に感じた情動は何だろう? 恐れか、怒りか、あるいはフラストレーションか」

 初期情動を特定したら、その根源にあるものは何か、次のように自問しよう。「なぜ私は怒り/恐れ/フラストレーションに襲われているのか、その根拠は何だと思うか」

 この種の自問をすれば、己の感情をかり立てているストーリーが明らかになり、自分のとらえ方を変えやすくなる。

 一例を挙げよう。輸送業界のシニア・エグゼクティブは、自分の強烈な情動が怒りであることを突き止めた。怒りの根拠について自問し続けるうちに、背後にあるストーリーが見つかった。それは「自分は無力で、間近に迫った変革イニシアティブの犠牲者だ」というものだった。

 この新たな認識により、彼女は自分の感情的な反応と「ストーリー」を、実際の出来事から切り離すことができた。この結果、変革イニシアティブの重要な側面を担う、新たなリーダーシップの責務を引き受けるための選択肢を見出すことが可能になった。

 権限を取り戻す新たなチャンスを得て、彼女のメンタリティーは「変革に巻き込まれる」と考える状態から、「リーダーシップの役割をどのように引き受ければ、自分のキャリアにとっても、組織にとっても、新たなチャンスを生み出せるか」に集中する状態にシフトした。

 ●状況への当事者意識を持つ

 ネガティブな状況を生み出すのに自分が一役買っていると認めることは、必ずしも容易ではない。自己認識が高い人は、変革をくぐり抜ける過程で、みずからの態度や行動が、どのように経験を形づくる一因になっているかを熟考する。

 たとえば、新たな変革について聞くたびに、自分がこれまで以上に急速に緊張するようになっていると気づいたとしよう。マインドフルネスを実践すれば、自分の感情を探って、感情がどのように己の態度に影響を与えているかを検討することが可能になる。

 ネガティブな感情や悲観的な見方は、行動、パフォーマンス、そしてウェルビーイングに影響を及ぼす(しかも良くない方向へ、である)。初期反応がどのように一連のネガティブな出来事を引き起こす一因になっているかを熟考すれば、自分の態度を修正しやすくなり、新たな視点を検討することを受け入れやすくなる。これにより、最終的には、すべての状況への反応が変化する

 ●ポジティブな視点を見つける

 新しい変革に賛同できない場合、希望などどこにもないように思えるかもしれない。だが、複数の研究結果によれば、ポジティブな視点を持つことで、新たな可能性が開かれ、変革を受け入れやすくなる。

 次のように簡単な質問を2~3、自分に問いかければ、もっと楽観的に考えやすくなる。最初に、こう自問しよう。「今回の変革に伴うチャンスはどこにあるか。次に、私や周囲の人たちにとって、これらのチャンスはどのように役立つだろうか」

 たとえば、我々の顧客の1人が最近、大きな組織変革を経験した。そこに至る1年半の間、彼は前の会社の一部門の再建と売却を指揮し、組織改革の末に誕生した新会社の社長への就任を引き受けた。

 2~3年前であれば、これは不可能なことだったと、彼は自覚していた。だが、「問題解決者」から「チャンス発見者」に変貌しようと懸命に取り組んだ。

 我々との協働によって、いかに心構えができたかについて、彼は次のように説明した。「私はこれまで、常に守勢に回って、いかなる状況でもエクスポージャーや損失をいかに最小化するかに重点を置いていました。重点を『いかに損失を最小化するか』から『いかにチャンスを見つけるか』にシフトし始めると、すべてが変わりました。私は守勢から攻勢に回りました。すると、以前には見えていなかったチャンスが見え始めたのです。いまでは、私の考え方にしっかりと組み込まれています。」

 変革に素早くかつ容易に適応する能力は、多くの場合、リーダーにとって競争力となる。変革に抵抗を覚えていることを自覚する機会があったら、あなた自身と周囲の人たちのために、上記4つのアプローチを活用して、機運と精神的エネルギーの向上を図ろう。変革を受け入れるためだけではなく、ポジティブに前に進むために、意図的な選択をするのである。


HBR.ORG原文:How to Embrace Change Using Emotional Intelligence, December 31, 2018.

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キャンディ・ウィーンズ(Kandi Wiens)
ペンシルバニア大学教育大学院ファカルティ・メンバー、ペンCLOエグゼクティブ・ドクトラル・プログラム、およびペン・マスターズ・イン・メディカル・エデュケーション・プログラムに所属。またエグゼクティブコーチ、全米で講演するパブリックスピーカー、組織変革コンサルタントでもある。

ダリン・ラウエル(Darin Rowell)
FrontierX.GLOBAL創設者兼マネジング・パートナー。複雑な環境で成功を促進する助けとなるよう、経営幹部にリソースとツールを提供することに尽力している。妻と息子2人とともに中米在住。

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