Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

デジタル時代の戦略的アウトソーシング(後編)

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本稿の前編では、デジタル時代に必要な事業変革における最大のチャレンジ、すなわち人的リソースのフル活用における課題解決にフォーカスした、4つの戦略的なBPOの活用方法(H-BPO)について紹介した。後編では、デジタル変革・新規事業に注力する人材のリスキル(再教育)について焦点を当て、グローバルな成功事例とその要諦について考察する。

写真左から、山形 昌裕、植野 蘭子、進藤 千晶

デジタル時代の戦略的アウトソーシング(前編)はこちら >>

創出人材のリスキルによる有効活用

 紹介したH-BPOの4類型のうち、既存事業における業務を引き受けることでデジタル変革・新規事業に注力する人材を創出する型である「①包括型BPO・②変革リソース創出型BPO」の効果を最大化するうえでのもう一つのカギは、創出された人材のリスキル(再教育)にあります。次にこのリスキルについて焦点を当てたいと思います。

 昨今の経営環境下において企業の変革を実現するには、新しいサービスやテクノロジーに関する知識といったハードスキルだけでなく、不確実性の高い環境下で決断をする力、周りを巻き込んで変革を推進していくリーダーシップなどのソフトスキルも備えた人材が求められます。このような人材を確保する手段には、外から採用する方法と既存の人材をリスキルする方法とがありますが、近年、リスキルを選択する企業が増えています。

 その主な理由は2点です。一つ目は、企業間での人材獲得競争が激しくなるなかで、上記のような人材の採用難易度はきわめて高く、採用コストも上昇傾向にあること。二つ目は、既存事業の縮小や必要スキル変化などで活用が難しくなった人材をレイオフすることによる悪影響が欧米企業においても明らかになりつつあることが挙げられます。

 レイオフを行うことにより、残った社員も「いつか自分の仕事がなくなるのではないか」という不安と緊張を抱えることとなり、士気やパフォーマンスが落ち込むだけでなく、場合によっては社内変革の抵抗勢力になることもあります。図1にあるように、レイオフを行うと、残った社員の仕事満足度、組織コミットメント、仕事の成果は大幅に低下し、スタッフを15%削減した場合に会社が生み出す新発明の数は24%減少するという調査結果もあります。

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出所:「安易な人員削減では目先の効果すら得られない」DHBR2018年12月号

 一方で、ジョージタウン大学のアンソニーカルナヴァル教授は、レイオフを行わずに、すでに企業の文化や業務知識に精通している既存社員をリスキルすることのメリットを指摘しています。「既存の従業員は、その会社の一員であるのみならず、その会社が属する業界の団体・コミュニティの一員であり、そのような企業・業界への深い知識やリレーションを持つ従業員をリスキルして有効に活用する仕組みを備えることは継続的なデジタル変革に対応し続けるために重要である」と述べています。

 事実、AT&Tは、レイオフを行わずに既存社員のリスキルを行うことで、製品開発サイクルが40%、収益化までの時間が32%短縮し、収益が27%増加したこと、また、初めて働きがいのある会社ベスト100に選出されています。

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