体験と記憶、人はどちらの幸福を重視するのか

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誰もが幸せになりたいと思っているはずだ。にもかかわらず、自分がどのような幸せを望んでいるのかは、意外なほどあいまいである。筆者らの調査により、「ひとときに体験する幸福感」と「後から思い出して感じる幸福感」、そのどちらを重視するかは、人生における幸せの形を左右しうることが判明した。


 当然のことながら、誰もが幸せになりたい。だが、人はどのような幸せを望んでいるのだろうか。ひとときに体験する幸せだろうか。それとも、振り返って幸せな時間だったと思い出せることだろうか。

 ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンは、この区別を「人生で幸せを体験すること」か「人生を振り返って幸せを感じること」と言い表している。少し時間をとって、自分がどちらの幸せを求めているか、自問してみよう。

 このような区別は、意味がないようにも思えるかもしれない。結局のところ、幸せに過ごした時間は、幸せだったと思い出すことも多い。美味しい食事とワインを前によき友と過ごす晩は、幸せな体験であるとともに、幸せな記憶となろう。同様に、プロジェクトのメンバーにお気に入りの同僚がいて、内容も興味深いものであれば、取り組むのも振り返るのも楽しいだろう。

 とはいえ、この2つは必ずしも同時に連動して生じるわけではない。

 テレビの前でくつろいで過ごした週末は、そのときは幸せな体験だが、記憶には残らず、後から考えると罪悪感すら招くこともある。幼い子どもと動物園で過ごす1日は、苛立たしい時間が多いかもしれないが、ひとときの喜びがあればその日は幸せな思い出になる。夜遅くまで残業した週は、けっして楽しい体験ではないが、その結果が大きな成功につながれば、振り返ってみると満足感を味わうだろう。

 幸福について研究する学者たちは、どの形の幸せを測定し追求すべきかについては長きにわたり取り組んできたが、これら2種類の幸せのどちらを求めているかという単純な問いを人々に尋ねたことはなかった。だが幸せになる方法を見出したいのなら、人はどのタイプの幸せを真に望むかを、理解することが役に立つと思われる。

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