メンタルヘルスのことを職場でもっと話す必要がある

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 朗報は、時代が変化していることだ。クリスティーナをはじめ、メンタルイルネスに苦しんでいる何百万人もの人が、職場で必要な助けを得る可能性がかつてないほど高まっている。

 ペンシルバニア大学ウォートンスクール教授で、同校のリーダーシップ・プログラム創設ディレクターでもあるスチュワート・フリードマンによれば、「現代社会で次に起きる解放運動のような大きな動きは、メンタルイルネスをめぐるものでしょう」。彼はコーポレート・アメリカに覚醒の萌芽を見て取る。「ウェルビーイング研究の大きな高まり、民間セクターにおける実践、そして社会全般に目を向けてください。そこには変化を実によく示す潮流があります」

 メンタルヘルスのニーズがあることが、これまでよりもはるかに理解され、受け入れられている。それでもやはり、フリードマンはデジタル革命には代償が伴うこと、それによってコミュニケ—ションやアイデンティティ、人が通常経験するストレスの量が影響を受けていることを認める。「非常に気がかりトレンドが、いくつかあります。自殺率、うつ病、不安障害、それに薬物使用がすべて増加しています。ですから、現在の対応は明らかに不十分です」

 メンタルヘルスへの理解を深めて、この問題をめぐるマイナスイメージを緩和することが目標であれば、従業員アシスタンスプログラムとともに、会話と教育が必須である。

 フリードマンは彼自身の経験を踏まえて、会話の重要性を指摘する。「20年ほど前の1987年から、私は、父親になるとはどういうことか、それによって私のキャリアと人生がどのように変化するかについて人前で話すようにしました。当時ウォートン・スクールでは、男性が子どもについて話すことはタブーでした。私の話は大いに注目を浴びました。私は変化の波の一部だったのです。会話の口火を切ること、そのトピックを意識的に選ぶことは、変化を起こすプロセスに重要な要素です。オープンであれば、経営幹部はみずからの経験について、もっと伝えようという気持ちになります。それによって、他の従業員の経験も普通のこととして受け止められるようになっていきます」

 オープンであれ、という精神の下、私自身の経験もここでお伝えしよう。

 コーポレート・アメリカでのキャリアを通じて、不安の発作と臨床的うつ病を繰り返すなか、私は何度も職場のトイレで泣いた。自分の悪戦苦闘を伝えたり、不安にうまく対処できるようにスケジュールを組んだり(たとえば在宅勤務をしたり、1日のミーティングの流れを管理したり)することが可能だとは、夢にも思わなかった。そのため、ただ転職を何度も繰り返した。

 いまになってわかることだが、従業員が仕事を辞めたとき、補充するのにかかる標準的なコストは、給料の3ヵ月分だ。企業の従業員全員が各自の最も基本的なニーズを表明することに悪戦苦闘している場合、従業員にとって、そして雇用主にとって、そのコストはどれくらいか、考えてみてほしい。

 うつ病と不安障害の重荷を職場の全員が分担しており、そこに悪循環がある。ず抜けた才能を持つ従業員の多くが、複雑な感情と内面的な葛藤を抱いているという事実を、経営幹部と人事担当者が認識し、何らかの対策を講じるところから変化は始まる。なぜなら、居場所と必要なサポートが得られれば、キャリアと人生を変えることが可能になるからだ。


HBR.ORG原文:We Need to Talk More About Mental Health at Work, November 01, 2018.

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モラ・アーロンズ=ミリ(Morra Aarons-Mele)
ウィメン・オンラインおよびザ・ミッション・リストの創設者。インターネット・マーケターとして1999年以来、ネット上で女性たちと連携している。ヒラリー・クリントンがインターネット・チャットを開始するのをサポートし、ウォルマートの初ブログを立ち上げた。ツイッター(@morraam)でも発信している。

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