「男性性を競う文化」が組織に機能不全を招く

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男性性を競う文化を変える

 男性性を競う文化が、有害であるにもかかわらず消えないのには、次の2つの理由がある。(1)有害な男性性と成功との関連性が非常に強力であるため、それが機能不全につながる振る舞いを生み出すのだが、人々は競い合いを続けざるをえないように感じる。(2)男性性の競い合いに疑問を呈した人は、「負け犬」のレッテルを貼られ、対抗する気持ちを削がれる。

 このような職場で人材多様性の取り組みを実施しても、意味のある変化が生まれる可能性は低い。むしろセクハラ防止のような現在行われている介入は、このような環境では失敗したり、裏目に出たりさえする(さらなるハラスメントを生む)のが一般的である。本当に変えるためには、男性性の競争を終わらせる必要があるのだ。

 これを成し遂げるには、組織はみずからの文化を検証し診断するための、より深く徹底的な取り組みを行う必要がある。これらの取り組みは、真剣な改革を起こす力を持ったリーダーが主導しなければならない。男性性の競い合いと、それが組織に問題を生み出す一因となっていることについて、認識させることが不可欠だ。

 たとえば、人はセクハラを「少数の腐ったリンゴ」のせいにしがちである。組織の文化が、不当な行いを野放しにし、許容し、後押しすらしたかもしれないことは省みない。組織がいじめやハラスメントを許さなければ、腐ったリンゴは継続的に取り締まられ、よいリンゴは悪くならない。

 手始めに、次の2つの具体的なアクションを起こすとよいだろう。

 ●組織のミッションにもっと焦点を当てる

 現在行われているような研修が、裏目に出る一因は、それがコンプライアンスと「してはならないこと」に焦点を当てていることである。これが往々にして、「全員のため」よりも「女性とマイノリティのための改善」として打ち出され、組織の中核ミッションと結びついていないように見えるのだ。効果的な介入は、組織の中核的な価値観と目標に、実質的かつ有意義な形で結びついていなければならない。

 たとえば、ある研究では、某エネルギー会社が石油掘削施設で、安全性のための介入を通じて男性性の競い合いを抑制した例が示されている。改革が必要となった理由は、業績である。石油掘削施設がもたらした災害は、生命と金、環境破壊、法的責任、評判の重大な低下という代償を招いていた。

 同社のリーダーは従業員に対し、安全性を高めることがミッションの要であると説得し、望ましい行動改善を観察し、それに報いた。

 手順への疑問や不確かな点があれば声を挙げる(「弱みを見せない」のではなく)、お互いの意見に耳を傾ける(群れを率いる「最強の」ボスに服従するのではなく)、安全性を重視して休憩を取る(「仕事最優先」ではなく)、同僚と協力し、互いを気遣う(「弱肉強食」の競争をするのではなく)――こうした行動に対して褒賞を与えたのだ。

 ミッションに基づく新たな規則は、男らしさを証明する必要性と相容れないことが明らかになった。事故や怪我が減っただけでなく、いじめ、ハラスメント、燃え尽き、ストレスも減少したのである。

 組織は他の中核的目標を利用しても、改革を促すことができる。男性性を競う文化が根本的に機能不全性をはらんでいることをふまえれば、ミッションを軸とするどんな改革であれ奏功する可能性が高い。

 たとえば、イノベーティブなチームに共通する特徴は、心理的な安全性であることが、研究により実証されている。そのようなチームのメンバーは、質問や疑問の声を挙げても冷笑や拒否をされないと知っている。

 心理的な安全性を高めてイノベーションを促進する取り組みは、男性性の競い合いを自然に抑制するだろう。その副産物として、職場環境は女性やマイノリティに対してより好意的で受容的になるはずだ。結局、男性性を競う文化では、女性やマイノリティのアイデアがあっさりと無視されたり却下されたりすることが最も多いのだから。

 ●「誰もが男性性を支持している」という思い違いを一掃する

 人は、泣きごとを言うヤワな負け犬だというレッテルを貼られるのを恐れて、男性性を競う規範に疑問を呈しようとしない。結果として誰もが、うまくやっていくためにそれに従いながら、個人としては嫌いな規範を表向きでは強化することに加担している。仕事を最優先していると見られるためだけに遅くまで残ったり、内心では不快に感じる冗談にも笑ったりするのだ。個々人が表向きは規範を支持しているため、あたかも全員がそれを支持しているかのように見えるわけだ。

 研究によれば、男性性を競う文化にいる人たちは、同僚がその規範を受け入れていると思っている。実際にはそうでなくても、である。そして自分が仲間外れではないことを証明するために沈黙を守ることで、事態に積極的に加担することになり、声なき不満が蔓延する。

 リーダーは、表立って男性性の競い合いの規範を否定し、他の人がそれまで秘めていた異議を声に出せるよう後押しすることで、この誤った認識を正せる。ただし、それを有言実行することも必要だ。褒賞制度を変え、新たな振る舞いの規範を示し、それまで見逃されたり報われたりしていた不当な行いを罰するのだ。また、声を挙げた人が罰せられたリ報復を受けたりすることが、公式にも(仕事の評価など)非公式にも(悪い評判や仲間外れなど)今後はないように、万全を期す必要がある。

 男性性を競う文化が「仕事の流儀」になると、組織も従業員も苦しむ。次のような特徴を持つ組織は、男性性を競う文化があるかもしれない。疑問を表明することが許されていない、運動は仕事の内容と無関係なのに「体育会系」が好まれる、長時間労働が名誉の証と見られている、同僚が仲間というよりも競争相手として扱われている、などである。

 問題を解決するためには、有意義な方法で文化の改革に尽力する必要がある。つまり、ミッションが男性性より優先される職場環境をつくり出すのだ。


HBR.ORG原文:How Masculinity Contests Undermine Organizations, and What to Do About It, November 02, 2018.

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ジェニファー L. バーダール(Jennifer L. Berdahl)
ブリティッシュコロンビア大学ソウダー・スクール・オブ・ビジネス教授。リーダーシップにおけるジェンダーと多様性を担当。セクハラと、それを助長する組織文化に焦点を当てた研究を行っている。

ピーター・グリック(Peter Glick)
ローレンス大学ヘンリー・メリット・リストン記念講座教授。ニューロリーダーシップ・インスティテュートでシニア・サイエンティストも務める。専門は、組織が女性のリーダーシップに対する障壁を乗り越え、より望ましい組織文化をつくる方法についての議論を促進すること。

マリアンヌ・クーパー(Marianne Cooper)
スタンフォード大学ヴイエムウェア・ウィメンズ・リーダーシップ・イノベーション・ラボの社会学者。フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグが設立した非営利組織リーンイン・ドット・オーグとマッキンゼー・アンド・カンパニーによるレポートWomen in the Workplaceの著者。

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