「ディープテック」が成功するための3つの条件

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マネジメント層を含む
人材のダイナミックな入れ替え

 筆者は投資の際に、米国のエンジェル投資家(たいていの場合、最初のステージで入っているか、もしくは我々のインナーサークルにいるメンバーだ)や、共同投資をするシリコンバレーのベンチャーキャピタルとともに、社外取締役を務める場合が多い。

 これまでに関わった米国のスタートアップは、社外取締役を含め、取締役会のガバナンスがきちんと機能している会社がほとんどだ。

 取締役会では、経営執行役に当たるCEOやCTOから経営執行状況に関する報告が行われ、今後の戦略的な方向性や資金調達、資本政策に関する議論が積極的に行われる。

 その後、社内メンバーを外して社外取締役のみが残る。CEOや経営執行役員の仕事ぶりに対して、「彼らのスキルが現在の会社の成長(ステージ)に合っているのか」「これまでに求められた役割を行えているのか」「これから重要になってくるスキルや人材は」などと話し合う。日本企業にはほとんどない光景だ。

 スタートアップではよくあることだが、役員同士で仲が悪くなった場合の仲裁や、場合によってはCEOに退職を促すか、そして代わりのCEO候補を探すのかなど、かなりドラスティックな議論を行っている。

 その中で、創業者を含むマネジメント層でさえも退任を促すフェーズが来る。冒頭のズークスもそうだろう。スティーブ・ジョブズ氏の有名な事例のように、たいていの創業者は非常に苦い思いをして去っていく。

 もちろん、それが全て良い方向に働く訳ではないが、それぞれに求められた役割をしっかりと理解し、相互にディシプリンを持って働くスタイルが経営には重要だと考えている。

 つまり、スタートアップには、多くの技術者が必要な開発フェーズと、ビジネスデベロップメントと呼ばれるビジネス開発の職務が必須となる成長フェーズがある。フェーズによっては、経営者も含めて人材がダイナミックに入れ替わることが、米国スタートアップの強みであるとともに、ディープテック・スタートアップ成功の秘訣だと思う。

 このように、ここで紹介した企業には、適材適所・グローバルに人材を融合させることで、スタートアップを大きく成長させていこうとするダイナミックな流れがある。

 世の中の生活スタイルを大きく変えたり、社会の大きな課題を解決したりするためには、技術(ディープテック)が重要ではあることに間違いはない。だが、それをいかに生かすための仕組みや環境づくりがそれ以上に重要なのである。

 つまり、花から実になるためには、マネジメントとビジネスディベロップメントを通じて、いかに優れた人材を連れてこられるのかが問われているのだ。

 

中島徹(Tetsu Nakajima)
東芝に入社後、研究開発センターにて無線通信の研究・無線LANの国際規格の標準化・半導体チップ開発業務に従事し、数十件の特許を取得。2009年から産業革新機構に参画し、ベンチャーキャピタリストとして、WHILLやイノフィス等、日本と米国シリコンバレーでロボティクス、IT、ソフトウエア系の出資を手掛ける。エンジニア経験を生かして投資先の業績改善にハンズオンでコミットし、中村超硬の上場や複数のスタートアップの売却などを実現。2016年にMistletoeに参画、2017年11月よりChief Investment Officerとして12ヵ国での投資活動の全般を統括。日本や米国シリコンバレー、欧州の有力な投資家・起業家とのネットワークを有する。北海道大学工学部、同大学院工学研究科修士、グロービス経営大学院修士。

 

【お知らせ】

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