Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

データの集中がもたらす競争の排除
競争と規制をバランスさせる最適解が必要だ

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GAFAと言われる巨大なプラットフォーマーが、経済的な市場支配に留まらず、政治的・社会的支配にまで影響を及ぼすようになったことで、さまざまな軋轢が生じている。最も懸念されるのはデータの集中がもたらす競争の排除だ。デジタル経済の時代に求められる競争政策のあり方について、一橋大学大学院経済学研究科の岡田羊祐教授に伺った

補完的技術をいかに速く組み合わせられるか

――デジタル経済が進展する一方で、優れた要素技術を持つ多くの日本企業が主導的な地位を獲得できなかったのは何故ですか。

岡田 羊祐(おかだようすけ)
一橋大学大学院 経済学研究科 教授

東京大学大学院経済学研究科修了。信州大学経済学部助教授を経て、2000年より一橋大学 経済学研究科 助教授。2006年より現職。公正取引委員会 競争政策研究センター所長(兼務)。

 あらゆる製品・サービスは補完的技術を組み合わせて成り立っています。とりわけデジタル経済は、補完的技術の組み合わせが極めて複雑で、かつ非常に速いスピードで変化していくという特徴を持っています。

 こうしたデジタル経済の特徴を踏まえると、いち早く補完的技術を組み合わせて製品化していくというスピードが重要なカギを握ります。個々の要素技術に強みがあったとしても、それをシステム化するスピードに強みがないと、最終的なマーケットで競争優位を築くことができないのです。

 日本企業は、個々の技術はいいものを持っているにもかかわらず、システム化という点で後れを取ってきました。特に情報技術の分野において、個々の技術から構成されるシステムのインターフェースを標準化し、補完的技術を柔軟に連結するようなエコシステムを形成するという視点が欠けていたと言えます。

 GAFAと言われる巨大なプラットフォーマーが何故、経済的な市場支配に留まらず、政治的・社会的支配にまで影響を及ぼすようになったのか。データの集中やそれを活用するアルゴリズムの開発など、いくつか理由はありますが、創業者であり、オーナーである経営トップの意思決定のスピードが速く、リスクの高い投資をある程度の規模で継続的に実行することができたことも大きなポイントでしょう。日本企業にはそれができませんでした。投資の規模は小さいですし、縦割りの組織では、彼らに対抗するスピードも持てません。

――日本企業がデジタル経済における競争を勝ち抜くには、やはりスピードがカギと言えそうですか。

 データの集中と、それを分析するアルゴリズムという面では、すでにプラットフォーマーと大きな差がついてしまっています。データの集中やAIの開発でまともに競争するのは、非常に厳しい状況です。一方で、データを収集し、解析した結果を活用するには、まだまだたくさんの補完的技術やサービスが求められています。日本企業が活路を見出すとすれば、そうしたところではないでしょうか。AIそのものはどんどん汎用化し、補完的な技術の希少性が今後は高まっていくとの見方もあります。センサーを活用するシステムなどがその一例です。補完的技術を継続的に開発していくことも、イノベーション競争においては大切です。

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