動的に変化する社会を捉えるのに役立つ思考法
――書評『社会変革のためのシステム思考実践ガイド』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第92回は、デイヴィッド・ピーター・ストロー氏の『社会変革のためのシステム思考実践ガイド』を紹介する。

社会変革を起こすために必要な
「システム思考」とは何か

 社会変革(ソーシャルイノベーション)への関心が高まっている。それまで解決が困難だと思われていた課題に対し、さまざまな立場の人たちが協力して挑み、その解決につなげるという学問領域を指すもので、たとえば、ホームレスの根絶、貧困の削減、公衆衛生、持続可能な環境保全などが主なテーマとなる。

 こうしたテーマを挙げると、企業活動とは関係がなさそうに感じるかもしれない。確かに1990年代まではどちらかというと、NPO・NGOや公的セクターに限られた話であった。だが、最近は企業やビジネスとも無縁ではない。

 なぜなら、企業の投資評価の軸に、ESGやCSV(Creating Shared Value)という考え方が導入されたからだ。とりわけESGとは、環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとったもので、投資ファンドが企業を評価する際の指標として用いられている。また、一部の企業は、ソーシャルイノベーションに取り込むことで、社会のニーズを見つけられ、新たなビジネスの創出につながると気付き始めている。

 それでは、社会変革を起こすにはどうしたらいいのか。簡単にいえば、政府・行政だけでなく、企業や非営利団体、市民団体などの多様な団体・組織が共通のアジェンダ(課題)を設定し、互いに協働して解決に当たるということに尽きる(これを集合的な社会変化、「コレクティブ・インパクト」と呼ぶ)。

 こう書くと明快ではあるが、その実現は非常に難しい。本書の言葉を借りれば「組織や社会システムは実際、それ自体が生き物であるかのように振る舞う」からである。

 そのため、常に変化する組織や社会システムを捉えることが課題解決の第一歩となる。本書はそこに一定のアプローチを提供しており、それが「システム思考」だ。

 著書では、システム思考を「望ましい目的を達成できるように、要素間の相互のつながりを理解する能力」と定義する。これは自分たちが望む最終的な目標と、実際に生み出しているものとの差を認識する考え方といえるだろう。

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