ギグエコノミーにまつわる4つの都市伝説を正そう

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 伝説1 ミレニアル世代はギグの仕事が大好き

 一般的には、ミレニアル世代が断然、パートタイムのギグの雇用形態を気に入っていると思われている。だが、EYの最近の調査から、実態はもっと複雑であることが判明した。

 ミレニアル世代(1981年から1996年の間に生まれた人)の60%は、ギグエコノミーにまったく関与しておらず、「ギグエコノミーから稼ぎを得ている」と回答した人は24%にすぎなかった。実際、我々が集計したデータによれば、フルタイムのキャリアに就いているミレニアル世代の割合は、2016年には45%だったのが、2018年には66%へと一挙に増加している。

 この変化は、経済成長に伴って、フルタイムの雇用が増えている現状を反映するものだ。これはまた、若い世代も、親世代と同じように「明確な出世コースおよび健康保険や有給休暇などの福利厚生のある、安定した仕事」を望んでいる可能性を示すものでもある。

 伝説2 やがて誰もが「ギガー」になる

 ギグエコノミーの規模とその拡大の速さについても、時折イメージが先行しすぎているようだ。測定値は大きく変わりうるし、どれくらい拡大しそうかという予測も同様である。

 大きな話題を呼んだ2013年の調査では、2020年までに(そう、わずか1年ほど先のことだ)、労働人口の実に40%が、いわゆる臨時雇用の労働者になる見通しが示唆されていた。この数字には、ギグ請負人やパートタイム雇用者、それに個人事業主が含まれている。

 だが実際には、コーネル大学の労働関係研究所とアスペン研究所の共同プロジェクト「ギグエコノミー・データハブ」の推定値によれば、その割合は多くても30%程度である。それでも高い数値であり、その数は増え続けている。とはいえ、これまでの世界が完全に消失しつつあると考えてはいけない。

 ギグのみでフルタイムの仕事を確保している労働者の割合は、わずか10%程度にすぎない。しかもギグワーカーのうち、オンデマンド・サービスのリフトやタスクラビットといったアプリから次のギグを得ている人の割合となると、さらに少なくなる。実際、過去1ヵ月間に、こうしたデジタルサービスを利用して仕事を手に入れた労働者の割合は1%未満だ。

 大半の人はいまでもまだ、時間外の仕事を昔からのやり方で獲得している。すなわち、副業でバーテンダーをしたり、臨時の仕事をしたりしているのであって、デジタルで召集されているわけではない。

 伝説3 ギグのほうが優れている

 EYがミドルマーケット企業リーダーを対象に年1回実施しているグローバル調査、「EYグロースバロメーター」の2018年版では、パートタイムとギグ雇用から離れる動きが確認された。ほとんどの企業はいまもまだ、フルタイム雇用にコミットしている。

 これは、そこからもたらされる利点(忠誠心、知識の維持、組織に蓄積される記憶、最高の人材を競合から引き抜く術)すべてを考慮した結果といえる。多くの仕事では、労働者がチームに必ず所属するか、あるいは監督下に置かれる必要がある。そのため、私の知り合いの起業家の多くは、可能な領域ではギグエコノミーを利用する反面、優れたフルタイム人材を雇用することにも、深く変わらぬ関心を抱いている。

 ギグ中心のビジネスは、従来の意味での「文化」を伝えることができない。ハーバード・ビジネス・スクール教授のD. クイン・ミルズ(企業経営学を担当)は、「そこで働く人々を監督することはできず、仕事のみのやり取りとなります」とインタビューで説明している。ミルズの指摘によれば、ギグエコノミーは企業に利益をもたらす可能性があり、拡大する見通しである一方、すべてのビジネスに向くわけではない。

 伝説4 ギグの仕事は空しい

 ギグは出世の見込みがない仕事であるという受け止め方があるが、それは真実ではない。

 ジョディ・グリーンストーン・ミラーを例に挙げよう。彼女はホワイトハウスからウォルト・ディズニー・カンパニーまで、一貫して輝かしいキャリアを歩んできた。ロサンゼルスで弁護士を務めた後、起業家に転向し、現在はビジネス・タレント・グループ(BTG)の共同創設者兼CEOを務めている。BTGの事業内容は、ハイエンドの人材とハイエンドの企業のマッチングであり、対象分野は金融、さまざまなオペレーション、およびファイザー、クラフト、マスターカードといった企業における買収・合併(M&A)だ。

 ミラーはインタビューの中で、最高レベルの人材は「協働する相手や仕事の内容を選択できること」を望むと述べた。これはEYの最近の調査結果と合致する。「EYグロースバロメーター」2018年版によれば、熟練した人材の不足に関する国際比較において、米国企業は他国の企業にもまして、この問題に頭を悩ませている。

 具体的な数字を挙げれば、この問題を成長への課題として挙げた企業の割合は、米国企業が25%であったのに対して、他国の企業では10%だった。米国の失業率が過去40年で最低水準にあることから、雇用対象となる人材プールには、適切な資格を持っている人の数がまったく不足しているのだ。

 リサ・ハフォードはコンサルタントであり、Navigating the Talent Shift(未訳)の著者でもある。そして、何年にもわたりギグ人材と仕事をしている。

 彼女が目の当たりにしている現状によると、ギグエコノミーは、あらゆる問題への答えではないとはいえ、スタートアップ企業が比較的低コストで必要な人材を確保するのに役立ち、また成熟企業が成長する助けになりうる。さらに、ベビーブーム世代とジェネレーションX(1960年代初頭または半ばから1970年代に生まれた世代)にとって、驚くべき恩恵になる可能性もある。

 ジェネレーションXの一員であるハフォードは、インタビューの中で、「私たちはオプションが多くなかった時代に育ちましたが、いまや多くの選択肢があります」と述べている。「オプションのあまりない環境で育った世代の人は、ギグエコノミーと聞くだけで怖じ気づいてしまうかもしれません。そんな人々がギグへとシフトする助けになりたいと思っています。この世代の人々が、実は企業の求めるさまざまなスキルを持っていること、そして選択肢が多くあることに気づくのです。ある意味、クールですよね」


HBR.ORG原文:Myths of the Gig Economy, Corrected, October 30, 2018.

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デイビッド・ジョリー(David Jolley)
アシュアランス、税務、トランザクションおよびアドバイザリー・サービス・ファームEYのアメリカズ・グロース・マーケッツ・リーダー。

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